マンションをなるべく高く売却するためには、事前に物件の価格相場を調べておくことが重要です。マンションの売却相場は不動産会社に査定依頼をすると分かりますが、不動産会社によっても査定額は異なり、なるべく安く買い取りたいという意図が働くこともあるでしょう。
この記事ではマンションの売却価格の相場や2024年3月に日銀が発表したマイナス金利解除による影響、高く売却するために何に注意したら良いのかといったポイント、また売却にかかる費用をご紹介します。
自分で物件の価格相場を調べることで不動産の知識が身につき、損することなく売買できる可能性がうんと高まるでしょう。
INDEX
全国のマンションの売却相場推移
まず、全国のマンションの売却相場の推移から確認しましょう。
全国のマンションの売却相場は、ここ10年おおむね上昇を続けています。
出典:不動産価格指数(令和5年12月・令和5年第4四半期分)|国土交通省
国土交通省が発表した不動産価格指数(令和5年12月・令和5年第4四半期分)によると、全国のマンションの不動産価格指数は2013年頃から上昇傾向が続き、2023年12月には過去最高の196.2を記録しています。
なお、戸建て住宅の不動産価格指数は2009年頃からほぼ横ばいの状態が続き、2020年からは上昇傾向にあるものの、2023年12月時点で118.5と、マンションと比較すると大きな開きがあります。
マイナス金利解除がマンション売却価格に与える影響
2013年頃からマンションの売却相場が急騰した要因として、2013年4月に日銀が導入した「量的・質的金融緩和」が挙げられます。
この「異次元緩和」とも言われる政策により、住宅ローン金利が低下したことで需要が高まり売却価格は上昇傾向となりました。
しかし2024年3月19日、日銀は金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を発表しました。これにより、今後は住宅ローン金利が徐々に上がっていくことが予想され、マンション価格にどう影響を与えるか注目が集まっています。
都心や駅近など好条件のマンションについては、需要が高いことから住宅ローン金利が多少上がったとしても影響はないと言われる一方で、郊外エリアのマンションについては価格が低下するとの見方もあります。
日銀は金利の引き上げを0〜0.1%程度にとどめる方針で、当面住宅ローン金利は大きく変わらない見通しですが、売却をご検討の方は引き続き価格の推移を注視していく必要がありそうです。
【主要都市を含む都道府県別】マンションの売却価格の相場
続いて、主要都市を含む都道府県ごとにマンションの売却価格の相場をご紹介します。
公益財団法人東日本不動産流通機構(通称東日本レインズ)によると、首都圏における2023年の中古マンションの成約物件価格は4,575万円と、11年連続で上昇しています。
参考:
首都圏不動産流通市場の動向(2023年)|公益財団法人東日本不動産流通機構
主要都市を含む都道府県ごとのマンションの売却価格相場は、次のとおりです。
参考:
2024(令和6)年3月度月例速報Market Watch[全国版]|東日本不動産流通機構
【東京都】マンションの売却価格の相場
2024年3月 | 2023年3月 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
売却価格(万円) | 6,002 | 5,442 | 10.3 |
㎡単価(万円) | 100.55 | 91.97 | 9.3 |
東京都の2024年3月のマンション売却平均価格は、6,002万円です。
東京都では売却価格・㎡単価ともに、他の都道府県よりも群を抜いて高値を記録しています。
前年の売却価格と比べても、10.3%と大幅に上昇していることが分かります。
【神奈川県】マンションの売却価格の相場
2024年3月 | 2023年3月 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
売却価格(万円) | 3,884 | 3,663 | 6.0 |
㎡単価(万円) | 58.82 | 54.33 | 8.3 |
神奈川県の2024年3月のマンション売却平均価格は、3,884万円です。
神奈川県は、今回ご紹介する都道府県の中では東京に次いでマンションの平均売却価格が高い県です。
なお、人気の横浜や川崎、沿岸部のエリアであればニーズが高く、高値での売却が期待できます。
【埼玉県】マンションの売却価格の相場
2024年3月 | 2023年3月 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
売却価格(万円) | 3,023 | 2,990 | 1.1 |
㎡単価(万円) | 44.23 | 44.52 | -0.6 |
埼玉県の2024年3月のマンション売却平均価格は、3,023万円です。
埼玉県は都内への通勤にも便利なエリアであり、マンションの価値も高い傾向にあります。
長年人口の増加が続いているのに加え、持ち家の比率も首都圏の中で最高水準であることから、今後もマンションの高いニーズが保たれると予想されます。
【千葉県】マンションの売却価格の相場
2024年3月 | 2023年3月 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
売却価格(万円) | 2,897 | 2,683 | 8.0 |
㎡単価(万円) | 40.28 | 36.74 | 9.6 |
千葉県の2024年3月のマンション売却平均価格は、2,897万円です。
マンションの売却相場は首都圏の中ではやや低いものの、やはり都内へのアクセスが良いことが影響し、比較的高値をキープしています。
前年比に関しては、売却価格が8.0%・㎡単価が9.6%と、上昇率も高いのが特徴です。
【北海道】マンションの売却価格の相場
2024年3月 | 2023年3月 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
売却価格(万円) | 2,115 | 2,092 | 1.1 |
㎡単価(万円) | 27.32 | 27.31 | 0.0 |
北海道の2024年3月のマンション売却平均価格は、2,115万円です。
前年と比べて大きな変化はないものの、観光ニーズの高まりや再開発から新築マンションへの投資に注目が集まっているため、中古マンションの価値も上昇しています。
特に、札幌などの中心部では投資用のマンションのニーズが高まっています。
【宮城県】マンションの売却価格の相場
2024年3月 | 2023年3月 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
売却価格(万円) | 2,360 | 2,340 | 0.8 |
㎡単価(万円) | 34.88 | 33.46 | 4.3 |
宮城県の2024年3月のマンション売却平均価格は、2,360万円です。
中心部である仙台市では、全体的に売却相場は上昇傾向にあります。
仙台市内には商業施設も多く、利便性の良さからマンションの需要が高まっています。
【愛知県】マンションの売却価格の相場
2024年3月 | 2023年3月 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
売却価格(万円) | 2,512 | 2,278 | 10.3 |
㎡単価(万円) | 34.16 | 30.91 | 10.5 |
愛知県の2024年3月のマンション売却平均価格は、2,512万円です。
3月に関しては前年比10.3%と大きく上昇していますが、年間の成約件数を見ると前年比がマイナスの月も比較的多いため、不動産会社とよく相談して売却のタイミングを図ることをおすすめします。
【大阪府】マンションの売却価格の相場
2024年3月 | 2023年3月 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
売却価格(万円) | 3,277 | 2,961 | 10.7 |
㎡単価(万円) | 48.78 | 44.55 | 9.5 |
大阪府の2024年3月のマンション売却平均価格は、3,277万円です。
売却価格は、昨年11月から前年比10%超えをほぼキープしています。
2025年には大阪万博が控えていることから、マンションの需要は今後数年、上昇傾向が続くことが期待できます。
【京都府】マンションの売却価格の相場
2024年3月 | 2023年3月 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
売却価格(万円) | 3,132 | 2,771 | 13.1 |
㎡単価(万円) | 50.54 | 44.47 | 13.7 |
京都府の2024年3月のマンション売却平均価格は、3,132万円です。
京都府は厳しい建築規制により供給戸数が少ないことや、大手企業の社員や学生からのニーズが高いことから、マンションの供給よりも需要が上回るエリアです。そのため、投資用マンションの購入を検討する方も多く、比較的高値で取引できる可能性があります。
【兵庫県】マンションの売却価格の相場
2024年3月 | 2023年3月 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
売却価格(万円) | 2,729 | 2,670 | 2.2 |
㎡単価(万円) | 38.21 | 37.87 | 0.9 |
兵庫県の2024年3月のマンション売却平均価格は、2,729万円です。
特に神戸市のマンションの売却相場は上昇傾向にあり、中央区はアクセスの良さからも人気の高いエリアです。
ただし、人口は減少傾向にあることから、ゆくゆくは売却価格の下落も考えられるため、売却は早いうちに検討することをおすすめします。
【福岡県】マンションの売却価格の相場
2024年3月 | 2023年3月 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
売却価格(万円) | 2,554 | 2,237 | 14.2 |
㎡単価(万円) | 38.62 | 33.99 | 13.6 |
福岡県の2024年3月のマンション売却平均価格は、2,554万円です。
直近1年間の売却価格の前年比は、多いときで20%を超える月もあり、マンション市場は比較的好調といえます。
福岡県は再開発が進んでいるのに加え、人口も増加していることから、今後もマンションのニーズは上昇していくと考えられます。
築年数の経過によるマンションの売却価格の変化
マンションは新築で購入したその時から価格が下がると言われています。築年数ごとの価格の変化を見てみましょう。
築浅物件が人気で、そのため築年数が経過するに連れて売却価格が下がるのが一般的です。
公益財団法人東日本不動産流通機構の調査によると、2023年に成約した首都圏の中古マンションの築年数ごとの成約価格と㎡単価は以下の通りです。
中古マンション成約状況
価格(万円) | ㎡単価(万円) | |
---|---|---|
築0〜5年 | 7,077 | 112.55 |
築6〜10年 | 6,655 | 100.54 |
築11〜15年 | 5,932 | 86.99 |
築16〜20年 | 5,509 | 78.15 |
築21〜25年 | 4,887 | 69.23 |
築26〜30年 | 3,344 | 51.48 |
築31〜35年 | 2,303 | 39.94 |
築36〜40年 | 2,672 | 50.49 |
築41年〜 | 2,260 | 46.37 |
参考:
築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)|公益財団法人東日本不動産流通機構
築20~30年頃は大規模な改修が必要になるタイミングのため成約価格が大幅に下がっていると考えられます。
築年数が古い物件は安く手に入るため、リノベーションで自分好みに住みやすくできます。また、新築マンションとして販売していた時からあまり価格が下がっていない中古マンションは、立地が良かったり管理がしっかりしていたりなど価値がある物件といえるでしょう。
参考:
築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)|公益財団法人東日本不動産流通機構
マンションの売却相場の調べ方
ここまでマンションの売却価格の相場をご紹介しましたが、ここからは実際に自分で相場を調べる方法を解説します。
実際に自分で相場を調べるには、いくつかの方法があります。今はインターネットで簡単に情報収集するための、パソコンやスマートフォンで使えるサービスがたくさんあります。
自分が住んでいるマンションの過去の取引価格や現在の売出価格、事例が少ない場合は近隣で似ている物件の事例を探して参考にすると良いでしょう。
以下で、主な相場の調べ方をご紹介します。
不動産ポータルサイトを活用する
もっともオーソドックスな方法は、不動産のポータルサイトでの相場調査です。
SUUMO、HOME’S、アットホームなど多くの不動産ポータルが存在します。エリアや駅からの徒歩分数、築年数別、専有面積などで検索できますので、近い条件の物件を参照してみましょう。
これらのサイトでは数多くの物件を扱っていて、購入希望者が常に比較検討しています。売却を希望している方は同程度の物件の中から自分の物件を購入してもらう必要があるので、不当に高い金額を提示することはおすすめできません。
掲載されている物件価格は特殊な事情がない限りは相場の範囲内に収まるため、売出価格の参考にできます。マンション名で検索すれば、自分が住んでいるマンションが見つかる可能性もあるでしょう。
いくつもある不動産ポータルですが、そのなかでもユニークな機能を有しているのが「HOME4U」です。このサイトの「相場価格検索」を使うと、指定した地域の平均価格が広さや間取りごとに表示されるため、相場を直感的につかむことができます。
売却までに時間的に余裕がある場合は、一定期間観察して相場動向を見るのも役立つでしょう。
「レインズマーケットインフォメーション」を活用する
レインズマーケットインフォメーションは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営している情報サービスです。
民間の不動産ポータルとは異なり成約価格が登録されているため、より信頼度が高まります。
レインズには過去に売買された不動産物件の情報が登録されており、間取りや平米当たりの単価、築年数などの条件で絞り込みができます。ただし、本来は不動産会社しか利用できないサービスであるため、一般の人が見られる情報には制限があります。
例えば、物件の住所の詳細やマンションの名前、階数などは非公開です。
その代わり、成約時期を指定したり、築年数×平米単価の分布がグラフで見られたりするので、民間の不動産ポータルと併用することで精度の高い判断が可能になります。
「中古マンション価格天気図」を活用する
中古マンション価格天気図は、東京カンテイが毎月公表しているレポートです。全国の不動産取引の状況を、天気図になぞらえて表現するユニークな内容となっています。
取引状況は「晴れ・薄日・曇り・小雨・雨」の5段階で表現され、それぞれ「上昇傾向」「やや上昇傾向」「足踏み傾向」「やや下落傾向」「下落傾向」を表しています。
価格天気図のメリットは、不動産取引相場を視覚的なイメージで理解できる点です。市場の傾向を簡単に把握でき、毎月動向を見ていくことで今後の市場の推移を推し測ることも可能になるでしょう。
「不動産情報ライブラリ」を活用する
国土交通省が提供する不動産情報ライブラリでは、過去の不動産取引をもとに作成されたデータが公表されています。
不動産の取引価格のほか、地価公示や都道府県地価調査といった公示地価を確認できます。住んでいる場所に一番近い標準地を見ることで、当該地域の地価相場が分かります。ピンポイントではありませんが、一定の目安にはなるでしょう。
路線価は「路線価図・評価倍率表」を活用する
国税庁の路線価図・評価倍率表では、路線価が公表されています。
路線価は、固定資産税や相続税を算定するための基準となるもので、土地が接する道路に対して設定されます。
単位は1㎡あたりの金額で、例えば20万円/㎡の道路に接した50㎡の土地であれば、20万円×50㎡=1000万円となります。
なお、一般的に路線価は公示地価の8割程度になっているため、路線価を0.8で割った金額を実際の地価と考えるとよいでしょう。
マンションの売却相場を調べるときの注意点
売却価格の相場はある程度自分で調べられますが、そこにはいくつかの注意点もあります。また、売却活動に係る費用についても事前に準備しておくと安心です。
ポータルサイトに掲載されている価格に注意
各社のポータルサイトで確認できる価格は、あくまで不動産会社が設定した売出価格であって、成約された価格ではありません。
実際の取引では、そこから値下げがされていたり、買主の値引き交渉が行われていたりする可能性もあるので注意が必要です。
中には、高い金額で設定した結果、売れ残ってしまった物件もあるでしょう。それを信じて「この金額でも売れるのか」と強気になってしまうのは危険です。
掲載されているデータを鵜呑みにしてはいけない
ポータルサイト、レインズ、地価公示や路線価など、各種の情報源に掲載されているデータ自体は間違ったものではありません。
しかし、あくまで情報を集めた時点での価格であり、最新のものではありません。特に公示地価については、公表が1年に1回しかされないため、現在の価格と大きく差が出てしまう可能性もあります。
悩んだら不動産会社に相談
相場調査はあくまで自分が騙されないようにし、売却後にどれほどの金額が残るかの目安を知るために行うものです。おおよその相場感を把握したら、その後は不動産会社の査定に任せましょう。
複数の不動産会社に見積もりを依頼する時は、一括査定サイトを利用すると手間がかかりません。まずは机上査定を依頼し、その結果から1,2社に訪問査定を依頼するとよいでしょう。
実際の取引においては、部屋の使用感や方角、設備、階数、周辺環境、その時点での景気の影響や、周囲の売り出し中の物件数など、多くの要素が絡み合います。数値だけではないこうしたリアルな情報を踏まえた総合的な評価である不動産査定は、不動産のプロにしかできない側面もあるのです。疑問点は納得いくまで質問しましょう。
中古マンションの査定方法のコツについては、こちらの記事も参考にしてみてください。
[関連リンク]
中古マンション売却時の査定方法と査定額アップのコツ、よくある質問
マンションの売り時とは
マンションの売却相場と併せて確認したいのが、売り時です。少しでも高値で売却するには、適切な時期に売り出しましょう。
マンションの売り時として、次のようなものが挙げられます。
築年数が浅いうちに
「築年数の経過によるマンションの売却価格の変化」でも説明したとおり、
マンションは築年数が浅いほど取得価格に近い金額での売却が見込めます。また、エリアによっては、取得価格以上の売却額がつくことも期待できます。
ライフステージの変化に伴い、将来的に住み替えを予定している場合でも、早めのタイミングで売却すると売却価格の下げ幅を抑えることができるでしょう。
例えば、子どもが大きくなったら引っ越そうと決めているのであれば、まだ小さいうちに買い替えることも選択肢かもしれません。
マンション市場が上昇しているとき
マンション市場が上昇している現在は、マンションの売り時といえます。
ここ10年間上昇傾向が続いているため、今後さらにマンション市場が上昇する可能性もありますが、2024年3月末からのマイナス金利解除により下落するリスクもないとは断言できないため、売り時の見極めは慎重におこないましょう。
決して自己判断せず、不動産会社に相談するのがおすすめです。
所有期間が5年を超えたとき
不動産の売却時に生じた所得を譲渡所得といい、所得税と住民税が課せられます。
譲渡所得にかかる税率は不動産の所有期間によって異なり、5年を超えると長期譲渡所得として税率が下がります。5年以下の短期譲渡所得と比較すると、税率に2倍もの差があるため、売却時の所有期間には注意しましょう。
あと少しで所有期間が5年を超える場合には、待ってから売りに出すと節税効果が期待できます。
なお、譲渡所得については「マンションの売却にかかる主な費用」で詳しく説明します。
最も需要が高まる時期
一般的に、物件の需要が最も高まる時期は2〜3月といわれています。転勤や就職など、人の移動が多い4月に向けて住宅の購入を考える世帯が多いためです。
2〜3月にマンションを売却するためには、11月頃から不動産の査定など販売活動を開始してください。
マンションを相場よりも高値で売却する4つのポイント
マンションの売却を決めたものの、何から始めたら良いか迷う方が多いと思います。こちらでは、相場より高値で売却するための4つのポイントを解説します。
複数の不動産会社で見積もりを取る
ご自宅のマンションがどれくらいで売れそうか、相場観をつかむために査定を依頼してみましょう。不動産会社によって査定額が変わるため、複数の会社に、まずは書類上のデータを基に行う机上査定を依頼するとよいでしょう。
住まいについての簡単な入力だけで一括で依頼できるサイトもあります。2~3社程度で見積もりを取るとおおよその相場がわかり、不動産会社から売出価格の提示を受けた際に価格交渉をする根拠ともなります。また、その結果や対応から、仲介を依頼する不動産会社を決める手掛かりにもなります。
マンション売却の実績が豊富な不動産会社に仲介を依頼する
マンション売却の実績が豊富な不動産会社に仲介を依頼することが大切です。不動産会社にはそれぞれ得意なジャンルやエリアがあり、マンションの売買に不慣れな不動産会社に依頼すると時間もかかり高値での売却が難しくなる可能性が高いです。
マンション売却の実績が多い不動産会社には高値で売るためのノウハウがあります。会社のHPやパンフレットを見たり、担当者にヒアリングしたりして、売買が得意か仲介の取引件数を確認しましょう。
なお、一口にマンションといっても投資用か居住用かなどで違いがありますので、売却したい物件と同種のマンションを扱っていることも重要です。
また、知名度があるからといって大手の会社が良いとも限りません。首都圏の物件は得意かもしれませんが、エリアによっては地元に密着した不動産会社の方がスムーズに運ぶこともあります。
専任(専属専任)媒介契約を結ぶ
仲介を依頼する不動産会社が決まったら媒介契約を結びますが、不動産会社に仲介を依頼する場合、次の3つの契約形態から選択します。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
契約できる不動産会社 | 複数 | 1社 | 1社 |
レインズ(不動産流通機構)への登録 | 任意 | 必須 | 必須 |
レインズ(不動産流通機構)への報告義務 | なし | 14日に1回以上 | 7日に1回以上 |
自分で買主を見つけた(自己発見)場合 | 取引できる | 取引できる | 取引できない(禁止) |
契約期間 | 制限なし | 3ヶ月まで | 3ヶ月まで |
専属専任媒介契約
不動産会社1社と契約して、売却活動の手厚いサポートが提供される方法です。もっとも拘束力が強く、自分で買主を見つけた場合でも直取引は禁止され、契約した不動産会社を通して家を売る必要があります。
専任媒介契約
専属専任媒介契約と同じく1社のみと契約し、売却活動のサポートを受けながら買主を探します。ただし、自分で買主を見つけた場合は、仲介会社を通さずに直接売却できます。
一般媒介契約
もっとも自由度の高い契約方法です。複数の不動産会社と取引可能で、自分で買主を探すこともできます。一方で、売却活動のサポートは専属専任媒介契約や専任媒介契約よりも控えめになります。
一般媒介契約では複数社で販売活動を行っており、他社で成約する可能性もあることから、どうしても販売活動がおざなりになってしまうようです。築年数が浅い、人気があるなど条件が良く売れやすそうな物件の場合は一般媒介で構いません。
一方、専属専任・専任媒介契約は1社のみと契約を結ぶため、売買が成立すれば不動産会社は確実に仲介手数料を受け取れるので販売活動にも力が入ります。契約期間の上限は3カ月で、期間中に売買が成立しなければ他社へ依頼される可能性があるため、積極的に買い手を探してくれやすくなります。
売却相場を確認して売り出し価格を設定する
マンション売却の際、不動産会社に仲介を依頼する方も多いかと思いますが、不動産会社に完全に任せるのではなく自身で売却相場を確認するのも忘れないようにしましょう。
先述したマンションの売却相場の調べ方を参考に、不動産会社から提示された売却金額と相場を比較してください。
もし、売却金額が相場よりも大きく下回っていた場合は、その理由を不動産会社に確認し、納得した上で売り出し価格を設定しましょう。
[関連リンク]
中古マンション売却時の査定方法と査定額アップのコツ、よくある質問
マンションの売却にかかる主な費用
マンション売却に関連したてさまざまな費用がかかりますが、主な4つの費用について説明します。
仲介手数料
マンション売却にあたり、不動産会社に仲介を依頼し買主を探してもらい、その結果として売買契約が成立すると、不動産会社への仲介手数料の支払いが発生します。仲介手数料は自由に決められますが、宅地建物取引業法によって上限が定められており、売却価格が400万円を超える場合、(売却価格×3%+6万円)+消費税が上限となります。
なお、不動産会社が直接買主となる場合には仲介手数料は発生しません。マンションの買取に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
[関連リンク]
マンション買取のメリットとは?早く高く売るためのポイントや流れについて解説
印紙税
マンションなど不動産を売買する際に作成する不動産売買契約書。その契約書に記載された売買金額に応じて、契約書に収入印紙を貼付しなければなりません。
例えば、取引金額が1000万円超5,000万円以下の場合、1万円の印紙が必要です。契約書に貼付した収入印紙は、印鑑や署名で「消印」を押すことで「納税した」ことになります。消印忘れが判明した場合、印紙税分の金額の過怠税が徴収されることになるので忘れないように注意が必要です。
売買契約書は売主・買主用の2通作成しますが、それぞれで印紙税分を負担するのが一般的です。また、売買契約書以外にリフォームの費用が1万円以上であれば、「建築工事請負契約」にも収入印紙が必要です。
譲渡所得にかかる税金
自宅マンションを売却したとき売却益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税、住民税、復興特別所得税の3つの税金が発生します。
譲渡所得については、他の所得と分離して所得税と住民税が課税されます(分離課税)。 なお、譲渡所得がマイナスの場合、つまり売却により損をした場合には課税されることはありません。
譲渡所得の計算方法は、以下のとおりです。
譲渡所得の計算方法:譲渡価格(売却金額)-取得費-譲渡費用
- 取得費:マンションの購入価格から減価償却費を除き、購入時の諸費用を加えた金額
(減価償却するのはマンションの建物部分だけとなります。)- 譲渡費用:仲介手数料や印紙税など
不動産の譲渡所得に関する税率は所有期間によって異なり、不動産を売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得、5年超であれば長期譲渡所得の税率が適用されます。
また、平成25年から令和19年までは、東日本大震災からの復興に必要な財源を確保するために創設された「復興特別所得税」として、各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
マイホームの売却にはさまざまな税金の特例があるので、譲渡所得が発生している場合は利用できる「節税」の特例がないか、損失が発生している場合は「還付」の特例がないか確認しましょう。
[関連リンク]
マンション売却で発生する税金はいくらかかる?簡単な計算方法や節税方法、シミュレーションをご紹介
住宅ローンの繰り上げ返済にかかる費用
住宅ローンを完済する前にマンションを売却して住宅ローンを繰り上げ返済する場合、事務手数料がかかります。金融機関によりその金額は異なりますが、数万円の繰り上げ手数料がかかるケースもあります。インターネット経由の手続きについて手数料を安くしている金融機関もありますので、よく確認してみてください。
[関連リンク]
住宅ローンの完済後に抵当権の抹消を行う方法。手続きの流れや費用を解説
マンションの売却には「リースバック」という資産活用法も
マンションを手放そうと思った場合、一般的な不動産売却や不動産会社による買取のほかに、リースバックという方法があります。
リースバックとは、今住んでいるマンションの部屋を市場に公開して売るのではなく、専門の不動産会社に売却する手法です。所有権を移転した後は、その会社からリースする形でそのまま住み続けることが可能です。
通常の不動産売却と違い内覧のための訪問がなく、また売却後に引っ越しをする必要もなく、売却によって多額の現金が比較的短期間で手に入るので、何かしらの理由でまとまったお金が必要となった場合には有力な選択肢になります。
一建設の「リースバックプラス+」では、「最大1年間の家賃を0円にする」「買い戻し価格が年々下がっていく」などのプランもあります。
様々な情報がインターネットで入手できる現代では、自分の住んでいるマンションの売却価格の相場を手早く見積もることが可能です。しかし、そこで分かるのはあくまでおおよその相場であり、実際の売出価格については不動産会社に査定を依頼した方が懸命です。
売却活動をスムーズに進めるためには、仲介を依頼する不動産会社の選択が重要になりますので、担当者との相性などを含め慎重に検討しましょう。
また売却にともない費用もかかり、状況によってはリースバックが適している場合もあるので、様々な提案をしてくれる不動産会社をパートナーとすることをおすすめします。
リースバックやマンションの売却については、こちらの記事でも解説しているので参考にしてみてください。
[関連リンク]
リースバックとは?仕組みやメリット・デメリット、トラブルの対処法をわかりやすく解説
家を売却する前によく考えよう!リースバックを選択するメリット