中古マンションを売却する方法は、大きく2つあります。
不動産会社が買主となるものを「買取」と呼び、不動産会社に仲介してもらって個人の買主を探す方法を「仲介」といいます。
買取は速やかな売却が期待できるのが特徴ですが、デメリットもあるので注意が必要です。
今回は、そんなマンション買取の基礎知識や、手続きの流れ、メリットやデメリット、必要な費用についてお伝えしていきます。買取を利用するときに注意しておきたいポイントや買取に向いているマンションの条件なども参考にしてみてください。
INDEX
マンション買取の基礎知識
まずは、中古マンションの買取について基本的な知識を身につけておきましょう。
買取は、不動産会社に物件を売却する方法です。よく比較される仲介との違いを理解し、自分の物件や売却したい条件に合わせて適切な方法を選びましょう。
マンション買取とは?
中古マンションを売却する方法の一つである買取では、不動産会社に物件を売却します。つまり、不動産会社が買主となるのが特徴です。
不動産会社との交渉を成立させれば売買契約が完了するため、確実に買い手が見つかり、速やかな売却が期待できます。
その一方で、買取では相場よりも売却価格が低くなりやすい点に注意が必要です。買取を行った不動産会社が利益をつけて販売したり、リノベーションをして販売するためです。
マンション買取と仲介の違い
中古マンションの売却方法には、仲介というものもあります。買取と仲介の大きな違いは、物件の買主が誰になるのかです。
買取では不動産会社が買主となりますが、仲介では主に個人が買主となります。仲介を利用して個人の買主を探すためには、広告掲載や購入検討者への内覧対応といった売却活動が必要です。その売買活動を不動産会社にサポート(仲介)してもらいます。
また、物件の売却にかかる期間にも違いがあります。
買取では不動産会社との交渉のみで速やかな売却が期待できますが、仲介では個人の買主を一から探すため売却に時間がかかります。
加えて、仲介では不動産会社に支払う仲介手数料が発生するのも異なる点です。
物件の価格については、買取の場合は査定価格が相場よりも安くなりやすいのに対して、仲介の場合は相場に近い市場価格での売却が期待できます。
買取は仲介と比べて売却価格が低くなりがちですが、売却完了までの時間と手間がかからず手数料もかからないのが特徴です。
不動産買取 | 不動産仲介 |
---|---|
主な買主:不動産会社 | 主な買主:個人 |
売主の対応:なし | 売主の対応:内覧などに対応する必要あり |
売却期間:短期 | 売却期間:長期にわたる可能性あり |
売却価格:相場より低くなることが多い | 売却価格:相場より高い可能性あり |
仲介手数料:不要 | 仲介手数料:必要 |
マンション買取が適している場合
不動産売却の方法である買取は、具体的にどのような方に適しているかご紹介します。
たとえば、住宅の買い替えで新居が決まっており、現在のマンションのローン残債と新居のローンとの二重ローンの状態を避けたい方は、マンション買取がおすすめです。
また、築年数の古いマンションにお住まいで、建て替えが必要となる前に確実に家を手放したい場合にも、マンション買取が便利でしょう。
転勤で遠い土地に引っ越すことになり内見対応などの販売活動に対応できない場合や、相続した物件で相続税支払いのため早期売却希望でマンション買取を選択する方も少なくありません。
マンション買取は、買い手を確実に見つけたい場合や、期限までに売却したい場合に適しています。また、遠方のマンションの売却など自分で販売活動ができない場合の選択肢としてもおすすめです。
マンション買取のメリット
買取でマンションを売却する際に、売主が期待できるメリットをご紹介します。不動産会社が買主となるため、プライバシーの保護やリスク回避につながり、安心して取引をしやすいのが魅力です。
- 仲介手数料が不要
- プライバシーに配慮して売却しやすい
- 短期間で物件を売却できる
- 売却後のリクス回避につながる
仲介手数料がかからない
不動産会社へマンションなど不動産売却の仲介を依頼し、売買が成立すると仲介手数料を支払わなくてはいけません。しかし、買取では直接不動産会社に買い取ってもらうため、仲介手数料は不要です。
仲介でかかる仲介手数料は法律で上限が決められており、マンションの売買金額が400万円を超える場合には、下記の計算式で算出できます。なお下限は決まっていません。
速算式:(物件価格×3%+6万円)+消費税
たとえば、仲介によって3000万円で売却した場合、最大105.6万円の仲介手数料が必要となります。不動産会社によって仲介手数料は異なるものの、上限で設定しているケースが多いので、それだけの支払いが発生します。
プライバシーに配慮して売却しやすい
マンション買取では、不動産会社が買主となるため、個人の買主を探す場合のように広告掲載や内覧を行う必要がありません。不動産情報サイトへの登録やチラシのポスティングは不要です。
そのため、近隣にお住まいの方に売却の事実を内密にしやすいのがメリットといえます。
また、時間と手間がかかる購入希望者への内覧対応は、売主の負担になりがちです。プライバシーの観点から、心理的に抵抗を感じる方もいます。マンション買取であれば、不動産会社の関係者が現地調査を数回程度行うのみで済みます。
売却を計画通りに進められる
マンション買取は短期間で物件を売却できるのが魅力です。すでに買主(不動産会社)が決定したうえで取引が進むため、おおよそ数週間で手続きが完了します。物件を速やかに現金化したい方にも適した売却方法です。
それに対して、仲介では売却までにおおよそ2~3カ月かかり、場合によってはさらに期間が長引く可能性があります。
マンション買取は計画通りに売却を進められ、スケジュール管理をしやすいのがメリットといえるでしょう。マンションの売却後に引っ越しを控えているときも、売却活動の影響で予定が変わる心配がありません。
売却後のリスク回避につながる
仲介によって個人の買主に中古マンションを売却するとき、売主は「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」を負います。
契約不適合責任とは、マンションの売却後に何らかの欠陥が発見された場合、売主が責任を負うというものです。場合によっては、修繕費用を負担しなければなりません。
一方で、マンション買取では購入者は不動産会社であるため、売主の契約不適合責任は免責されます。
また、マンション買取では物件の設備修復も不要です。不動産会社は老朽化の度合いや不具合などを把握したうえで物件を購入するため、売却前に売主の負担で修復せずに済みます。
築年数が経過した物件や、古い設備が残っている物件であれば、修復費用の大幅なコストカットが期待できるでしょう。売却後のトラブルやクレームを避け、リスク回避がしやすいのも買取のメリットです。
マンション買取のデメリット
マンション買取は、マンションの築年数や立地などの条件によっては、売主にとって不利な取引になったり、買取できなかったりする場合があります。デメリットをよく理解したうえで買取をご検討ください。
- 不利な取引になる場合がある
- 買取できない物件もある
不利な取引になる場合がある
マンション買取は物件が売れ残る心配がなく、確実に売却しやすいのが特徴です。その一方で、仲介でも問題なく売却可能な物件に関しては、売主にとって不利な取引になる可能性があります。物件の条件によっては仲介を選んだほうがより多くの利益をあげられるかもしれません。
たとえば、築年数が浅く比較的新しいマンションや、人気エリアに位置する立地に恵まれたマンションは、仲介でも早期に売却が期待できるでしょう。仲介の場合より売却価格が下がる買取での売却では、不利になる可能性があります。
また、設備が新しくリフォームの必要がないマンションは、設備修復が必要なマンションと比べて買取のメリットを実感しにくいといえるでしょう。
反対にいうと、築年数が経過した古いマンションや立地条件の良くないマンションのように、仲介による売却で買い手がつきにくい物件には、買取が適しています。
マンション買取は仲介よりも売却価格が下がりやすい分、買取のメリットを十分に生かせる条件の物件かどうかを見極めることが大切です。
買取できない物件もある
マンション買取では、まれに不動産会社が買取できない物件もあります。そもそも、不動産会社は買取で仕入れた物件にリフォームやリノベーションを施し、再販して利益をあげるのを目的としています。仲介と比べて売却価格が低くなるのもそのためです。
したがって、不動産会社が買取をして再販で利益をあげにくいと判断される物件は、買取ができないことがあります。建物が老朽化しているにもかかわらず再建築ができない物件や、土地の状況などから商品化しにくい物件などは、成約(売却)できない可能性も考慮しておきましょう。
マンション買取におすすめな人
マンション買取にはメリットとデメリットのどちらも存在しますが、どんな人が選択肢に入れるべき手段なのでしょうか。ここでは、マンション買取がおすすめな人の特徴をご紹介します。
まとまった資金をすぐに調達したい人
先述の通り、マンション買取はおおよそ数週間と仲介よりも短期間で完了するというメリットがあります。何度も内覧の対応をしなくても良いため、遠方のマンションを所有している場合でも手間と時間をかけずに売ることができます。
例えばマンションの買い替えで新居の費用支払いに期限があったり、事業資金や入院治療費などまとまった資金が至急必要だったりする方は、マンション買取がおすすめです。
ただし資金が必要な時期まで数ヵ月程度の余裕がある場合は、仲介と買取の特徴を併せ持った「買取保証」も選択肢に入れて検討しても良いでしょう。
仲介では売れにくい物件を売りたい場合
築年数が古い・事故物件・デザインや生活動線が一般的なものと異なる…などのマンションは、内外装の良し悪しにかかわらず仲介では売れにくい傾向にあります。これに当てはまらなくとも、さまざまな事情から売却に出してもなかなか買い手が付かないケースも珍しくありません。
すでに仲介で売却活動を行っているものの長期にわたり買い手が付かずお困りの方は、買取の検討をおすすめします。なお、仲介では一般的に3ヵ月~半年程度で売却完了となる場合が多い傾向にあります。売却活動の開始から半年~1年程度を目安に、買取も選択肢に含めて考えてみると良いでしょう。
複数の利害関係者がいる場合
相続や離婚など、複数の利害関係者がいる場合も買取がおすすめです。
買取は買い手が付くまでマンションを手放すことができないというデメリットがなく、業者さえ見つければすぐに売却できます。途中で条件が変動するリスクもなく交渉がスムーズに進むため、相続や離婚に伴う財産分与で確実にマンションを手放せる手段が必要な方は買取がおすすめです。
なお、相続であれば心配がいらないケースも多いですが、離婚などで売却する場合はマンションにローンが残っていることがあります。買取の場合は査定額が市場価格よりも低くなりやすいため、ローンの残債が査定額を上回ると売却そのものができません。査定額の方が高いとしても、財産分与できる資金が減ってしまうリスクに注意が必要です。
仲介がおすすめな人
仲介業者を通したマンションの売却は、どのような人におすすめの手段なのでしょうか。ここでは、仲介がおすすめな人の特徴をご紹介します。
できるだけ高く売りたい人
できるだけ高くマンションを売ることを重視している人は、買取ではなく仲介が適しています。特に駅近辺や築年数が浅いなど条件の良いマンションは買い手が見つかりやすいため、マンションが高く売れるチャンスが大いにあります。
また、住宅ローンの残債がある状態で住み替えをする場合は残債の支払いに加え、新居購入費や引っ越し費用などまとまった資金が必要です。買い替えをしたい時期まで期間に余裕があるのなら、より多くの費用を売却代金で補填できるよう仲介での売却を検討した方が良いでしょう。逆に住宅ローンを完済しているマンションから住み替える場合、築年数が古く仲介では買い手が付かない可能性があるため買取や買取保証での売却も選択肢に入れることをおすすめします。
住宅ローンの残債が多い人
少しでも高く売却できる可能性があるため、住宅ローンの残債が多い人は仲介での売却がおすすめです。
前項で述べた通り買取は売却額が低くなりやすいため、住宅ローンの残債が多いとマンションの売却代金だけでは返済しきれない可能性があります。売却で完済できなければ住宅ローンの借入時に設定した抵当権を抹消できず、売却そのものが不可能となります。一方で仲介は買取よりも高く売れる傾向にあり、住宅ローンの残債が多くても完済の見込みが立てやすいです。
ただし前項の「高く売りたい人」も注意するべきポイントですが、内装が劣化していたり事故物件だったりするマンションは仲介では買い手が付きにくいため売却額が大幅に低下する恐れがあります。住宅ローンの残債と仲介・買取の査定額におけるバランスを見極めつつ、ご自身にとって有利な手段を選択しましょう。
時間に余裕があり買い手を見極めたい人
仲介でマンションの売却活動を進めると、一般的に5~10件程度の内覧に対応する必要があります。「すぐにマンションを売りたい」「売却活動を周囲に知られたくない」と考える方にとってはデメリットですが、時間に余裕がある方ならメリットになり得るポイントです。
マンションに思い入れがあり、「どうせ売るなら大切に住んでもらえる人の手に渡したい」という考えが強い方は内覧を通して買い手を見極めることができます。また、内覧を行う中でさまざまな購入検討者の意見を聞けるため、より高値で売るためのヒントを得られるなど売却活動を有利に進みやすくなる効果にも期待できます。
マンション買取業者を選ぶポイント
マンションの売却は一般的に何度も経験することではなく、安心して売却できる業者を探すにも苦労することが多いです。
マンションを買い取ってくれる業者は数多くありますが、会社ごとに実績や買取価格の基準、サービスの質は大きく異なります。後悔せずにマンションを売却するためにも、以下のポイントを意識しながらマンション買取業者を選びましょう。
複数の業者で見積もりを取る
マンション買取において「査定額」は、実際の売却代金と同等になります。より高い金額で買い取ってくれる業者と出会えるよう、複数の業者に見積もりを依頼して査定額を比較してみましょう。
賃貸住宅を取り扱う不動産会社には及びませんが、それでもマンション買取を行う業者は多いです。仲介ではなく買取の場合はリノベーション後に再販することを前提としているため、利益を出すために市場価格よりも低い金額が提示される傾向にあります。しかし具体的な買取価格は、業者によって大きく変わることも珍しくありません。
マンションを得意とする買取業者を選ぶ
買取業者を選ぶ際はマンション買取、特に物件がある地域での買取実績が豊富なところを選びましょう。多くの実績と経験から培われたノウハウがあり、その地域における相場にも精通しているため、自社が損をしない買取価格の最低ラインも把握できているからです。つまり、より高い金額で買い取ってもらうための交渉を進めやすくなります。
一口に買取業者と言っても、戸建て中心に一部のマンションや土地を取り扱っている不動産買取業者もあれば、マンション買取を専門的に扱っている業者もあります。特に都市部の買取業者は、マンションを専門としている場合が多いです。
マンションの近辺にある営業店を尋ねたり、インターネットで「マンション買取業者 ○○(地域)」など地域名を加えて検索したりして、実績豊富な業者を探してみましょう。
サービス内容も要チェック
買取価格や実績だけでなく、サービスの内容も業者によって異なります。マンション買取業者でよく見受けられるのは買い取り後に不要な家具・家電を処分してくれる、買取から立ち退きまでの期間に融通が利く、「買取保証」での対応が可能…といったサービスです。
ご自身の希望を踏まえ、業者ごとのサービス内容も確認しながら選ぶことをおすすめします。
なお、買取後も愛着のある自宅を手放したくないとお考えの場合は、「リースバック」に対応している業者がおすすめです。マンションの売却代金を手にしながらそのまま住むことができる手段を探している場合は、単に売却するだけでなくリースバックの利用も検討してはいかがでしょうか。
マンション買取で注意したいポイント
マンション買取で信頼できる不動産会社を選び、より高額で物件を売却するために、注意しておきたいポイントをご紹介します。査定依頼をする前にぜひご一読ください。
- 売却価格の相場を知っておく
- 査定では相見積もりをとる
- 物件の引き渡しに関する契約内容を確認する
- 高く売れやすい時期を選ぶ
1.売却価格の相場を知っておく
不動産の売却は、人生の中でそうそうあるものではないため、不慣れな人は「最初に聞いた買取業者の言い値=適切な金額」だと勘違いしてしまいがちです。場合によっては大損をする可能性もゼロではありません。
売却の前には、周辺エリアの市場相場をチェックしておきましょう。国土交通省の「土地総合情報システム」をチェックしてみるのもよいですし、民間の相場検索のサイトや無料査定サイトもあります。
いくらで売れそうか相場を事前に把握しておくことで、適切な金額で売却し、後味の悪い思いをしないで済むでしょう。
中古マンションの相場の調べ方についてはこちらの記事で解説しています。高値で売るコツもご紹介しているので、参考にしてみてください。
[関連リンク]
2.査定では相見積もりをとる
マンション買取の査定依頼では、相見積もりをとることをおすすめします。
相見積もりとは、複数の仲介会社へ同時に見積もりをとることです。
複数社の査定内容や買取実績を比較することで相場がわかりやすく、その後に詳細な見積もりをとる業者の選定をする目安になります。その際は、簡単な入力で利用できる不動産一括査定サイトを利用すると便利です。
3.物件の引き渡しに関する契約内容を確認する
契約内容によっては、空調や家具などの処分に費用がかさんでしまうケースがあります。後々後悔しないようにするためにも、以下の点をチェックしておくと安心です。
まず、「売却代金の決済日」と「物件の引き渡し日」が、自身の希望に合っているかを確認します。
また、基本的に買取で老朽化したマンションや設備の修繕は不要ですが、契約書にも「現況での引き渡し(売主は修繕不要)」という内容が含まれているかを念のため確認しましょう。
さらに、設備や家具の処置について、「引き渡すのか」「処分してから退去か」「処分費用を支払って置いていけるのか」といった点を明確にしておく必要があります。
4.高く売れやすい時期を選ぶ
マンションをはじめとした不動産は、時期により買取価格が変動します。
年度の変わり目で新生活を始める方が多い1~3月頃、社会人の異動や転勤が多い9~11月頃は、ほかの時期よりも高額での売却が期待できます。可能であれば、物件が高く売れやすいタイミングを狙って査定を依頼すると良いでしょう。
マンションを売却する際の査定方法や査定額アップのコツはこちらの記事でも解説しているので、参考にしてみてください。
[関連リンク]
中古マンション売却時の査定方法と査定額アップのコツ、よくある質問
買取に向いているマンションの例
「所有しているマンションは、買取に向いているのか?」と悩む方もいることでしょう。買取を利用するのがおすすめのマンションの具体的な条件を解説します。
築年数25年以上の古いマンション
旧耐震基準(1981年5月までの建築確認での基準)に当てはまる物件の場合、仲介では買い手がつきにくいのが現状です。なぜなら、万が一大地震が起こった際に被害が大きくなりやすく、買主が組む住宅ローンの金利も高くなるためです。
また、築年数が経っている(25年以上など)物件は、売却後配管設備などに何らかの欠陥が見つかる確率も少なくありません。
東日本不動産流通機構(レインズ)の調査によると、中古マンションは築25年以下までが売れやすいとされ、成約した平均築年数は22.67年でした。築25年を超えると需要が下がり、仲介による売却が難しくなるおそれがあるため、仲介での売却が難しい物件は買取の利用をおすすめします。
仲介では、「契約不適合責任」によって売却後に売主が修繕費を負担することがあります。買主が宅地建物取引業者の場合は適用されないため、あらかじめリスクを回避するためにも、築年数が経って老朽化が進んでいる物件は買取を依頼したほうがよいでしょう。
参考:「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年)」(公益財団法人東日本不動産流通機構)
事故物件
事件や事故があった場合、仲介による売却だと大幅に値引きされるか、長期間にわたって売れ残る危険性が高いといえます。
また、売主は買主に「告知義務」があるため、事故物件であることを隠すことはできません。告知する事項を黙ったまま売却してしまうと、その後にトラブルとなってしまうことがあります。とはいえ、購入希望者に毎回事情を説明するのも大きなストレスとなるでしょう。
買い手が見つかりにくい物件は、買取業者に直接売却するのが得策でしょう。
部屋の状態が悪いマンション
ゴミ屋敷あるいはペットの多頭飼いなどにより、ひどい汚れや臭いがあると、仲介での売却は難しいと予想されるため買取を利用しましょう。個人の場合、内覧時の印象が悪すぎて、住みたいとは思わないからです。
買取業者は、ハウスクリーニングやリフォームを行った後の状態を想定して査定します。リフォーム費用などの分、売却価格は安くなってしまいますが、自分でリフォームしてから売却しても成功するとは限らないので、業者に任せるのが無難です。
マンション買取の流れ
マンション買取は、不動産の速やかな売却が期待できるのが特徴です。実際に買取を利用したら、どのような流れで取引が進むのでしょうか。ここでは、査定から引き渡しまでの流れをお伝えします。
STEP1:事前準備
まずは、中古マンション売却の相場価格を調べておきましょう。その際は、売却予定の不動産の近隣地域にある、部屋の面積や間取りが似たような条件の物件を参考にします。
買取価格は、販売価格の相場の7割~8割が目安です。不動産会社の査定額が適正であるか確認するために、あらかじめ調査しておくことをおすすめします。
また、買取査定を依頼する不動産会社の選定も行います。
インターネットで不動産会社のホームページを調べたり、近隣にある店舗へ足を運び相談をしたりして、候補となる不動産会社を絞り込みましょう。マンション買取は不動産会社と直接の取引であるため、信頼できる業者を見つけることが大切です。
STEP2:査定依頼
次のステップとしては、不動産会社へ査定依頼を行います。査定方法には、簡易的な「机上査定」と詳細な「訪問査定」の2種類があります。
不動産会社の候補が多いときは、まず複数社に机上査定を依頼し、各社の査定結果を比較し業者選びの参考とすると良いでしょう。最終的には訪問査定を行い、詳細な査定額で比較してください。
STEP3:交渉と打ち合わせ
不動産会社が提出した査定額をもとに、交渉や打ち合わせを行います。買取額に納得できないときは、価格交渉をしても構いません。
また、引き渡し時の残置物の処分費用や決済時期といった、売却の条件についても確認しておきましょう。契約前に十分な交渉と打ち合わせを行うとトラブルを防ぎやすくなります。
仲介で売却する場合はこの後から販売活動が始まり、買主探しや内覧対応、場合によっては購入候補者からの値下げ交渉など条件調整が続きます。買取の場合は、この後は契約となりスピーディーに進みます。
STEP4:売買契約の締結
不動産会社が提示した買取価格に納得し、買取条件について了承できたら、売買契約の締結へと進みます。契約締結後は交渉ができなくなるため、売買契約書の内容にはきちんと目を通しておきましょう。
また、手続きの当日までに必要書類を揃え、準備を済ませておくことも大切です。
STEP5:決済と引き渡し
売買契約の締結が完了したら、最後に物件の決済と引き渡しが行われます。中古マンションに住宅ローンの残債がある場合は、さらに抵当権の抹消手続きを行う必要があります。
入金確認後、不動産会社へ物件の鍵を渡したら、マンションの買取手続きは完了です。
マンション買取に必要なもの
マンションの買取売却を進めるために必要な書類をご案内します。取り寄せるなど時間がかかる場合もありますので事前に確認しましょう。
登記識別情報通知(登記済み権利書)
マンションの所有者が登記名義人であることを証明するための書類で、マンションを取得して登記した際に法務局から交付されます。登録名義人となった人にのみ通知されます。
固定資産税納税通知書
毎年1月1日時点の登記簿上の不動産所有者宛てに送付される、その年度の納税額が記載された書類で、4月〜5月ごろに届きます。
マンションの管理規約
分譲マンション内の管理・使用について定めた規約で、入居時に配布されます。この規約は区分所有者相互間で取り決めるもので、一定の条件を満たせば変更も可能です。最新版かどうか確認しましょう。
マンションの売買契約書・重要事項説明書
マンション入居・購入時に締結した売買契約書と、同時に渡される重要事項説明書。内容は一部重複するものもありますが、登記や権利情報などが記載されています。
物件のパンフレット・設備仕様書
マンションが新築で販売されたときの資料で、建物全体の仕様や各住戸の間取り図、設備などの詳細が記載されています。もしリフォームで設備を交換している場合は、その説明書なども必要です。
耐震診断報告書
建築確認済証の交付年月日が昭和56年5月31日以前のマンションの耐震性について、専門家が調査し耐震レベルを判断した内容を報告する書類。不動産取引の際は説明・表示する義務があります。
アスベスト使用調査報告
宅地建物取引業者は不動産売買にあたり、建物についてアスベスト(石綿)を使用しているかどうかの調査結果の有無の確認と説明、調査していればその結果と内容を説明する義務があります。
登記識別情報通知(登記済み権利書) | 所有者であることを証明する書類 |
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固定資産税・都市計画税納税通知書 | 支払い証明と日割り計算に必要 |
マンションの管理規約・長期修繕計画書 | 管理状況確認のため |
物件のパンフレット | 各住戸の間取りや建物全体の配置、設備の詳細が掲載 |
マンションの売買契約書・重要事項説明書 | 権利・義務を確認 |
耐震診断報告書 | 専門家が耐震レベルを判断した内容を報告する書類 |
アスベスト使用調査報告 | アスベスト使用有無を調査した書類 |
身分証明書 | 運転免許証、マイナンバーカードなど |
実印・印鑑証明書 | 印鑑証明は3ヶ月以内に発行したもの |
銀行口座の情報 | 売却金振り込みのため |
ローン残高証明書・ローン返済予定表 | 住宅ローンを支払い中の場合 |
マンション買取にかかる費用
マンション買取を利用すると、印紙税や登記費用など諸費用のほか、住宅ローンの繰り上げ返済手数料、譲渡所得税といった税金が発生します。必要なお金とその理由を解説します。
マンション買取にかかる主な4つの費用
- 印紙税
- 登記費用
- 住宅ローンの繰り上げ返済手数料
- 譲渡所得費用
印紙税
印紙税とは、マンションの売買契約書に貼付する印紙代のことです。納税する金額は取引額に応じて定められており、買取金額が1,000万円超~5,000万円以下なら1万円、5,000万円超~1億円なら3万円が必要となります。
契約書は2部作成しますが、一般的には売主と買主の双方で負担するケースが多くなっています。
登記費用
登記費用は、銀行等の金融機関が保有している抵当権を抹消する登記にかかる費用です。不動産1つにつき1,000円がかかります。
また、司法書士に登記を依頼する場合には、登記費用とは別に、報酬を支払う必要があります。
住宅ローンの繰り上げ返済手数料
マンションの住宅ローンがまだ残っているケースでは、完済のために繰り上げ返済を行う際に手数料が発生するおそれがあります。
金額は金融機関によって異なり、無料から数万円程度まで条件はさまざまです。繰り上げ返済手数料の有無については、金融機関に確認しましょう。
譲渡所得費用
マンション買取によって譲渡益が発生した場合は、所得税や住民税が発生します。たとえば、5年超居住していたマンションの場合は、譲渡所得に対して15.315%の所得税と5%の住民税がかかります。一方で、5年以内なら所得税が30.63%、住民税が9%です。
ただし、居住用の不動産を売却するケースでは、「3,000万円の特別控除の特例」が使用でき、所有期間にかかわらず譲渡所得から最高3,000万円までの控除を受けられます。
[関連リンク]
マンション売却で発生する税金はいくらかかる?簡単な計算方法や節税方法、シミュレーションをご紹介
買取と仲介のいいとこ取り!「買取保証」
不動産の買取と仲介の特徴を兼ね備えた「買取保証」という売却方法があります。
買取保証では、決められた期間内に仲介での売却活動を行い、期限を過ぎても物件が販売できない場合は不動産会社の買取を利用します。買取保証のサービスを利用すれば、物件を高額で売却できる可能性があるうえに、期限までに確実に買い手を確保しやすくなります。
不動産会社のなかには買取保証に対応している業者もあるため、買取と仲介と併せて選択肢のひとつとして検討してはいかがでしょうか。
マンション買取でスムーズかつ計画的に売却しましょう
マンション買取は不動産会社が買主となるため、確実な売却が期待できるのが特徴です。売却価格はやや安くなる傾向にありますが、速やかに手続きを進めやすく、計画的に売却したい方に適しています。
築年数が経過した古い物件や室内の状態が悪い住居、早く現金を得たい場合などに向いているため、中古マンションの売却をご検討中の方は、仲介と比較したうえでぜひご検討ください。
すぐに資金を確保したい場合はリースバックという選択肢も
資金確保のためにマンションの買取を利用される方の中には、本当は引越しをしたくない方もいます。そういった方におすすめするのがリースバックという選択肢です。
リースバックは、自宅の売却後も住み続けることができるサービスなので、近所の方へ売却の事実を知られる可能性も低く、お子さまの学区も変わりません。マンションの買取と同じように比較的短期間で資金を調達することができ、設定された賃料を払いながらそのまま住み続けることができます。
不動産会社が提供するリースバックの商品には、サービスごとに特色があります。なかでも一建設の「リースバックプラス+」は、ライフスタイルに適したサポートを受けられるのが魅力です。
リースバックの目的や将来のビジョンに合わせて、2つのプランをご提案。短期的に買い戻しの予定が無いご家族や、ずっと同じ住環境をご希望のご家族に適した「標準プラン」、早期に買い戻すご予定の方や、とにかく賃料を抑えたい方、一時的な資金調達などに適した「定期プラン」から、ご家族のニーズに合うプランをお選びください。
さらに「リースバックプラス+」では、両タイプのプランに共通したサービスが充実しています。
賃貸借契約では、敷金・礼金・仲介手数料・更新料が不要。「はじめごあいさつコール」や「24時間ホームセキュリティ」など、高齢者の暮らしに安心のサポートをご利用いただけます。
なお「定期プラン」にはオプションサービスとして、住み替えの手間とコストを抑えることができる「はじめの住み替え」があります。ご自宅のマンションを買取で売却後、最長1年間は0円で住み続けられ、引っ越し費用も一建設が負担します(費用には上限があります)。
ライフスタイルに合わせて選べる便利なリースバック商品をお探しなら、一建設までどうぞお気軽にお問い合わせください。
まとめ
マンションの売却における「買取」は不動産会社に買い取ってもらう手段、「仲介」は不動産会社を仲介して個人に買い取ってもらう手段です。できるだけ早く・確実に資金を得たい人であれば即金性の高い買取がおすすめですが、時間がかかっても高額で買い取ってもらうことを重視したい人なら仲介がおすすめです。それぞれにメリット・デメリットがあるため、ご自身の状況や希望を踏まえて慎重に検討しましょう。「まとまった資金が必要だけど今住んでいる家を手放したくない」という考えがある方なら、リースバックもおすすめです。
よくある質問
マンション買取のメリット・デメリットは何ですか?
マンション買取における主なメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
- 仲介手数料がかからない
- 広告を出さないためプライバシーに配慮して売却しやすい
- すでに買い手が決まっているため売却を計画通りに進められる
- 契約不適合責任を伴わないため売却後のリスク回避につながる
一方で以下のようなデメリットも存在するため、注意が必要です。
- 好条件なマンションだと不利な取引になる場合がある
- 再建築や商品化が難しく買取できない物件もある
上記のメリット・デメリットを踏まえると、マンション買取はできるだけ早く資金を得たい方や仲介ではなかなか買い手が付かない条件のマンションを売りたい方、低リスクでマンションを売りたい方に適しています。
住宅ローンが残っていてもマンション買取は可能ですか?
住宅ローンの残債がある場合でも、マンションを売却すること自体は可能です。ただし、住宅ローンの残債があるマンションを売却するにあたって、売却時にローンを完済のうえ抵当権を抹消しなければなりません。
もしもマンションの売却額が住宅ローンの残債に満たないと、その差額分を自己資金で補填する必要があります。結果として自己資金がマイナスとなる恐れがあることを念頭に置き、売却するかどうかを検討しましょう。
まずは住宅ローンの現状について把握し、売却に踏み切る場合は高値での売却を目指せる「仲介」を中心として業者を選ぶことをおすすめします。仲介業者の中でも、会社によって仲介手数料や売却活動におけるサポート力やサービス内容は異なるため、複数の業者に相談のうえ比較してみましょう。