家を売却する際、あらかじめ空き家にしておくケースもあれば家に住みながら売却活動を進めるケースもあります。家に住みながらの売却はさまざまなメリットがある一方、デメリットも存在するため注意が必要です。今回は家に住みながら売却することのメリット・デメリットと、売却を成功させるためのコツも詳しく解説します。
住みながら家を売る4つのメリット
家に住みながら売却すると、さまざまなメリットが得られます。主なメリットとして挙げられるのは、以下の4つです。
メリット①:新居の購入に必要な資金を得られる
新居に引っ越した後に自宅を売却する方法もありますが、資金に余裕がない限り事前に新居の購入費用を用意しておくことは難しいでしょう。
しかし、家に住みながら売却すれば、売却で資金を得られる見込みが立ってから新居を探すことができます。その売却資金を引っ越しや新居の購入費などに充てられるため、住み替えの資金計画を立てやすく資金不足になるリスクも抑えられます。また、住宅ローンが残った家を売却せずに新居を購入する場合は、住み替え費用と既存の住宅ローンでコストが重複する恐れがあります。そのようなリスクの回避にも、家に住みながらの売却は有効です。
メリット②:住み続けることで家の劣化を防ぎやすくなる
家を空けておく、つまり人が住んでいない家は閉め切ったままの状態となるため空気が循環せず湿気が溜まります。湿気はカビや設備の錆びの原因となり、時間が経つほど広がって家そのものの劣化を加速させます。そのため、家の価値が下がるだけでなく購入者も見つかりにくくなることに注意が必要です。
一方で家に住みながらの売却を選択すれば、生活をする中で空気の循環や掃除・設備の手入れが日常的に行われるため、上記のような劣化を防ぎやすくなります。結果として、家の価値を保ったまま家の売却活動を行えるというメリットにつながります。
メリット③:内覧者にリアルな生活イメージを伝えやすい
新居を購入する人は、「この部屋に置ける家具・家電のサイズはどれくらいか」「家具・家電の配置はどうすべきか」「実際の住み心地はどうなのか」など生活イメージに関わるポイントを確認するために物件の内覧に臨みます。
空き家の場合、空室の状態からそのイメージを膨らませる必要があります。一方で売り手が現在も住んでいる状態なら、その家で人が暮らしている姿や使用している家具・家電のサイズ感を直接見ることが可能です。そのため買い手はリアルな生活イメージを固めやすくなり、購入を早く決断してくれることもあります。売却活動の成否を左右する内覧を有利に進められるという点は、大きなメリットです。
ただし、室内の整理整頓が行き届いていなければかえって家のイメージダウンにつながる恐れがあるため注意しましょう。
メリット④:内覧者に家の魅力を直接伝えられる
当然ながら、家の購入を検討している人には内覧で好印象を与えることが重要です。
住みながら売却すると内覧者と直接顔を合わせる機会が訪れるため、実際に住んでみなければ分からない魅力を伝えられます。家の住み心地だけでなく、近隣施設や駅から家までの人通りといった環境も伝えるとより効果的です。
逆もしかりで、その家に住んでみなければ分からない難点も内覧者にとっては重要な情報です。「この家に住むとなればどんなデメリットに注意すべきなのか」という疑問が内覧者に残ると、購入を見送られる可能性があります。そのような疑問を解消するためのやりとりを、内覧者と直接できる点も住みながら売却することのメリットです。
住みながら家を売る2つのデメリット
家に住みながら売却するとさまざまなメリットが生じますが、以下のようなデメリットに注意が必要です。
デメリット①:内覧の対応に追われる
購入検討者の希望によっては、急に内覧をしたいという連絡が来る場合があります。アクセスが良好・周辺に施設が多く利便性が高い・不動産としての価値が高い…など、好条件な家であるほど内覧希望が立て続けに生じるものです。特に休日は内覧が集中しやすいため、立ち合いのためにプライベートの予定が組めなくなることが考えられます。家の買い手が見つかるまでは売却活動を優先させなければならないため、その間は休日でもプライベートの時間をゆっくりと過ごせなくなることは留意しておきましょう。
また、内覧前には都度、家の中を掃除したり生活臭の対策を行ったりといった準備も必要です。内覧者によっては、家の掃除が行き届いていないとそれだけで購入を躊躇する場合があります。キッチン・トイレ・浴室・洗面台などの水回りは通常の掃除では落とせない汚れができることもあるため、必要に応じてハウスクリーニング業者も利用しましょう。
デメリット②:生活感でイメージダウンさせる恐れがある
家に住みながら売却をすると、どうしても室内に生活感が出てしまいます。実際の生活イメージを固めやすくなる半面、生活感がありすぎるとかえってイメージダウンにつながる恐れがあります。上述した通り、内覧が決まったら生活臭や生活汚れを落とすために掃除を徹底し、内覧者に不快感を与えない空間にすることを心がけましょう。
空き家は家具・家電がないぶん、家全体が広く見えます。しかし住みながらの売却では家具・家電を処分することができません。空き家に比べて部屋が狭く見えるため、第一印象という点においては不利になりがちなこともデメリットです。だからこそ、できる限りの掃除や整理整頓が非常に重要となります。
住みながら売却を成功させるコツとは?
家に住みながらの売却を成功させるには、いくつかのコツを押さえることが大切です。ここでは、売却を成功させる3つのコツをご紹介します。
コツ①:複数の不動産会社に査定を依頼する
家はできるだけ高く売却したいものですが、どのくらいの査定額がつくかは不動産会社によって変わります。稀なケースですが、不動産会社によっては自社側の利益を多く得るために相場よりも低い査定額を提示してくる場合があります。
売却で損をしないためにも複数の不動産会社に査定を依頼しつつ、家を高く売るノウハウ・実績が豊富かつ誠実に対応してくれるところを見極めることが大切です。
コツ②:内覧者は「お客様」として対応する
家は売却意思を決めた時点で「お客様に売る商品」となるため、家の掃除・整理整頓を徹底するのはもちろん、内覧者はお客様として対応することが重要です。
内覧時の応対は不動産会社が仲介してくれますが、不動産会社ができることはプロならではの視点を活かした案内です。任せっきりにせず、自主的に家の魅力や注意点といった情報を提供しましょう。売り手本人から感じよく対応してもらえることで、内覧者は好印象を抱いて購入を前向きに検討してくれる場合があります。
コツ③:売却活動と並行して新居を探す
買い手が見つかり家を引き渡すタイミングで引っ越せるように、売却活動と併せて新居探しも進めておきましょう。新居が決まったら買い手の希望入居時期に合わせて、引っ越し業者の手配や準備も進めておくとスムーズに引き渡せます。
新居が決まらないまま家の引き渡しが決まると、「仮住まい」で一時的に生活してから改めて引っ越すことになるため余計な手間と費用がかかります。
住みながら家を売却する方法は?
家に住みながら安心して売却する手段としては、「リースバック」と呼ばれるサービスがおすすめです。リースバックとは主に不動産会社に家を買い取ってもらうと同時に賃貸契約を結び、その後は家賃を支払いながら家に住み続けられます。
リースバックのメリットとは
リースバックはいわゆる「仲介」とは違い、不動産会社に家を直接買い取ってもらえます。そのため売却活動が不要で、内覧のスケジュール調整・対応に追われる心配がありません。すぐにまとまった資金を得られるため、できるだけ早く家を現金化したい方に適した手段です。家の売り出し情報が出回ることがなく、頻繁に内覧者が訪問することもないため、周囲に家の売却を知られたくない方にもおすすめです。
また、家賃を支払えば年単位で家に住み続けることが可能なので、ゆっくりと時間をかけて新居を探せるという安心感もあります。
リースバックで注意したいデメリット
リースバックにおける家の売却額は、相場の70~80%程度と低くなる傾向にあります。不動産会社は買い取った家を自由に売買することができないため、そのぶん買取価格を下げなければならないからです。
賃料については利回りを考慮して算出されるため、家の売却額が高くなればそのぶん賃料も高くなることにも注意しましょう。具体的な金額は不動産会社によって変わりますが、売却額に対し10%程度が年間賃料となるケースが一般的です。
なお、リースバックは比較的新しいサービスであるため未だ対応している業者が少ないことも難点です。利用する場合は、信頼性の高い業者を慎重に見極める必要があります。
住みながら家を売る事ができるリースバックについて、詳しく知りたい方はこちらの記事をご活用下さい。
【関連リンク】
住んだままで持ち家を売却できるリースバックとは?メリットや事例、売るコツを解説
まとめ
家を売却するにあたって、必ずしも空き家にしてから売却活動をする必要はありません。家に住みながら売却活動を進めることも可能で、購入検討者に実際の生活をイメージしてもらいながら家の魅力をアピールできるなどのメリットがあります。ただし、家に住みながらの売却は内覧対応に追われる中で新居を探さなければならないため、少なからず労力がかかります。家はすぐに売却したいけれど、新居は家に住みながらゆっくりと探したい…とお悩みの方は「リースバック」の利用がおすすめです。