日本銀行が2024年3月18〜19日に開催した金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除が決定されました。
マイナス金利政策とは、2016年1月以降、金融機関が日銀に資金を預ける際の金利(日銀当座預金金利)が-0.1%とされていたもので、今後はゼロ金利を経由して金利のある世界への移行が図られていくことになります。
この「異次元金融緩和」から「通常の金融政策」への大きな変化を受けて、住宅ローンに注力するネット銀行大手の住信SBIネット銀行は2024年4月に、住宅ローン変動金利の基準金利を2.775%から2.875%へと引き上げました。今後、住宅ローンの金利が上昇し、返済負担も連動して上昇することが不安視されています。
このような動きが次々と広がっていくのか、今後の住宅ローン金利の動向を考えていきます。
日銀のマイナス金利解除が住宅ローンに与える影響
住宅ローンの金利は大きく、「固定金利型」と「変動金利型」に分けることができます。
市中金利の変動リスクを回避できる固定金利型と、金利変動の影響を受ける反面メリットもある変動金利型では、そもそも金利の決まり方が異なります。
日銀のマイナス金利政策解除によって2つの住宅ローン金利がどのような影響を受けるのか、詳しく説明していきます。
固定金利とは
固定金利型住宅ローンとは、金融機関と借入契約をした時点の金利が返済期間を通して適用され、市中の金利が動いても返済期間中の借入金利は影響を受けない住宅ローンです。
借入期間中の金利が固定されるため、返済額が増減することはありません。
返済額が一定なので、返済計画や家計管理をしやすい点が最大のメリットです。
固定期間については、フラット35のような全期間固定金利型と、一定期間の金利が固定される固定期間選択型の2種類があり、固定期間選択型では期間を2年、3年、5年、10年などから選択できます。
固定金利型住宅ローンの金利は、主に「長期金利」の影響を受けます。
長期金利とは国が発行する長期国債の金利のことで、一般的には「10年物国債の利回り」を指します。国債は債券市場で売買されているため、長期金利は日銀が決める短期金利とは違い、市場取引によって決まります。
長期金利が上昇すると、金融機関が長期間貸し出す資金を調達するコストが上がるため、連動して固定金利型住宅ローンの金利も上昇する傾向があります。
ただし、長期金利上昇にともなって上昇するのはあくまでも、「長期金利上昇後に貸し出す固定金利型住宅ローンの金利」です。つまり利用者は、「契約後に金利が上昇するリスク」を回避できます。
その反面、金融機関は金利変動リスクを負う可能性が大きいため、変動金利型住宅ローンより金利を高く設定します。2024年5月時点の固定金利型住宅ローンの金利は1~2%程度で、固定型と変動型の金利差は1.4%に達しています。
金利は金融機関によって異なるほか、傾向としては物件価格に対して借入額が占める割合(融資比率)が低く、金利を固定する期間が短いほど金利は低くなります。
変動金利とは
変動金利型住宅ローンとは、金融機関が個々に定める基準金利に連動して、借入期間中に一定間隔で適用金利が見直される住宅ローンです。
市中の金利変動の影響を受けて、借入期間中に金利が変動する可能性があるため、返済額が増減することがあります。
金利の見直し期間は金融機関によって異なりますが、半年ごとの見直しが一般的です。
固定金利型と比較すると、金利が低いことが最大のメリットです
変動金利型住宅ローンの金利は、主に「短期金利」の影響を受けます。
短期金利とは、広い意味では1年以内の金融資産の金利を指しますが、変動金利型住宅ローンに関係するのは「短期プライムレート」です。「短期プライムレート」とは金融機関が信用度の高い企業に融資をする際の金利(期間1年以内の短期貸出)を指します。短期プライムレートは、日銀の政策金利とほぼ連動します。
短期金利が上昇すると、金融機関の日々の資金繰りのコストが上がるので、銀行の貸出金利にすばやく影響が及びます。そのため、変動金利型住宅ローンの金利も定期的な見直しの際に上昇する可能性が高くなるのです。
その反面、金融機関は金利変動リスクを負う可能性が小さく、固定金利型住宅ローンより金利を低く設定しています。
2024年5月時点の変動金利型住宅ローンの金利は、0.2~0.7%程度です。
金利は金融機関によって異なるほか、金融機関とのつきあいの深さ(クレジットカードや給与振り込みなど)や頭金の大小などに応じて金利が変わることがあります。
低金利が長く続いているため、これまでは変動金利型住宅ローンを利用している人が多数派でした。利用者の間では、今回のマイナス金利解除に始まる金融政策の正常化を見込んで、返済額の増加を不安視する声が高まっています。
日本銀行のマイナス金利解除の背景
そもそも今回、日銀がマイナス金利の解除に踏み切った理由は何でしょうか。
その背景を解説します。
マイナス金利政策はなぜおこなわれたのか
日本銀行が2016年にマイナス金利政策を始めた理由は、「デフレ脱却をより確実にするため」でした。
日本は1997年以降、長く物価上昇率(インフレ率)が低迷し、それを原因とする経済成長の鈍化に悩んでいました。いわゆる、物価下落(デフレーション)による「デフレ経済」です。
そこに大規模金融緩和によるデフレ脱却を掲げた安倍晋三氏が、2度目の総理大臣に復帰します。安倍総理の指名を受けた黒田東彦氏は、2013年4月に日銀総裁に就任すると同時に、2年でインフレ率2%を達成してデフレ脱却を目指すという「異次元の金融緩和」を開始しました。
ところが、消費税増税の影響もありデフレ脱却を2年で達成することはできず、日銀はさらに金融緩和政策を追加します。
この1つが史上初の、マイナス金利政策でした。金融機関が日本銀行に開設している当座預金口座の一部にマイナス0.1%の金利をつけることで、銀行が資金を貸し出しや投資に回さず積み上げておくと損をする(金利を支払う)環境をつくり、金融機関が世の中にお金を送り出すように仕向けるものでした。
マイナス金利の導入後、企業への貸し出し金利や住宅ローンの金利が下がったため、一定の効果はあったと考えられます。ただしマイナス面もあったため、2023年からの物価上昇の定着にともなって解除される運びとなりました。
マイナス金利解除の理由
マイナス金利を解除した理由について、日本銀行の植田和男総裁は2024年3月19日の記者会見で「賃金と物価の好循環を確認し、2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至った」と述べました。
つまり、日銀はデフレ脱却に目処がついたと考え、金融政策を「非伝統的」なものから、通常の金融政策に戻したのです。
実際には、マイナス金利政策を開始してから物価が力強く上昇するまでには、7年という長い年月を要しました。
しかも新型コロナウイルスによる世界的な供給力の低下や、ロシア・ウクライナ戦争に端を発するブロック経済化などが世界的なインフレを引き起こした面があり、そもそもマイナス金利政策の効果は疑問視されていたのです。
そのうえ、マイナス金利政策には金融機関の収益悪化という副作用が懸念されていました。
物価上昇と賃上げの好循環を支援するため、緩和的な金融環境は今後も続くと考えられますが、総裁の交代にともなってマイナス金利政策がいち早く解除されたのは必然だったといえるでしょう。
日本銀行の金融政策について
2016年以降、日銀の金融政策は「短期金利」と「長期金利」の2本立ての金利操作で成り立ってきました。
短期金利の操作は、2016年以前からおこなっている「無担保コール翌日物金利」のゼロ金利(0.0%〜0.1%)誘導と、金融機関に対するマイナス金利政策を指します。
長期金利の操作は、債券市場で日銀が国債を買い入れて金利水準を一定幅に収める「イールドカーブコントロール」政策を指しています。
このうち、短期金利についてはマイナス金利政策を解除し、それ以前から続いているゼロ金利政策に回帰しました。
今後も安定的に賃金上昇をともなったインフレ率2%を達成していけば、短期金利を上げゼロ金利政策をも離脱する道筋が見えてきます。
長期金利についてもイールドカーブコントロール政策が解除され、長期金利は日銀のコントロールを離れて、市場で自由に決められる本来の形に回帰しました。
解除後の変動金利はどうなる?
マイナス金利が解除された影響は、変動金利型住宅ローンにどのように現れてくるでしょうか。
詳しく説明していきます。
変動金利はしばらく低金利が続く
マイナス金利が解除された際の記者会見で日銀の植田和男総裁は「当面は緩和的な金融環境を継続する」「短期金利の上昇は0.1%程度にとどまり、金融機関の貸出金利が大幅に上昇するとはみていない」と述べました。
この発言は、今後しばらくは日銀が低金利を継続することを意味しています。
ここで、変動金利型住宅ローン金利の決まり方を押さえておきましょう。
適用金利 = 基準金利 - 引き下げ幅(優遇幅)
変動金利型住宅ローンの基準金利は、各金融機関が優良企業向けの短期貸出(1年未満の貸し出し)に適用する最優遇金利である「短期プライムレート」(短プラ)に連動します。
短プラは2009年1月に1.475%になってからは、日銀がゼロ金利やマイナス金利を導入した後も変更されていません。貸し出しにともなうリスクを考えると、これ以上金利を引き下げて利ザヤを小さくすることはできなかったのです。
すなわち、変動金利型住宅ローンの適用金利は基準金利の変更でなく、利用者の属性に応じた「引き下げ幅(優遇幅)」によって決まってきたといえるでしょう。
今後の変動金利の見通しについても、基準金利と引き下げ幅を分けて考える必要があります。
基準金利は、短期金利がゼロ金利を離れて上昇していけば、それにともなって上昇していく可能性が高いといえます。裏を返せば、それまでは基準金利の上昇はないため、当面は利用中の変動金利型住宅ローン金利が上がる可能性はないと思われます。
一方で、引き下げ幅の変更については短期金利の上昇を待つ必要はありません。むしろ、マイナス金利解除による金利上昇ムードを背景に引き下げ幅が縮小され始め、今後新たに設定される変動金利型住宅ローンの適用金利が上昇する可能性があります。
とはいえ、引き下げ幅の縮小だけで適用金利が急上昇するとは考えられません。
引き続き、変動金利型住宅ローンの低金利は続くでしょう。
中長期的な変動金利の見通し
この先に住宅購入を検討している人、あるいはローンの支払いがまだ長期間残っている人にとっては、中長期的な金利動向も非常に気になるところでしょう。
結論からいうと、金利がある環境に移ったからといって、この先金利がどんどん上がっていくことは考えづらいといえます。
つまり、住宅ローン金利が欧米や新興国のような高金利になることはなく、当面低金利が続くと考えられます。
経済の分野では、古くから「金利は経済の体温計」という言い回しが使われます。
経済が過熱し、物価が上がっていけば資金需要が盛り上がり、それに応じて金利も上がっていきます。反対に、経済が冷めたままでは物価は上昇せず、金利も上がりにくいということです。
2022年までの約30年にわたって、明らかに日本経済は後者の状態だったため、住宅ローン金利は低い水準で推移してきました。
今後の住宅ローン金利も日本経済の好調・不調にかかっています。
この先の日本経済を展望するとき、最も大きなファクターは「少子高齢化」です。
「団塊の世代」がほぼリタイヤを迎えた2010年代末から日本経済はすでに人手不足になっており、失業率は低くほぼ完全雇用の状態です。労働人口も2019年にピークをつけ、それ以降は減少の一途となります。
本来、労働力の減少は、供給力不足と賃金の上昇を通じて強力なインフレ圧力となります。ところが日本では、世界インフレが起きるまで2%のインフレ目標を達成できませんでした。
これは、人口減少によって日本国内の物やサービスへの需要も減退すると考えた企業が、国内投資を手控えて海外に生産拠点を移したり、海外の企業を買収したりといった動きの影響です。
海外に投資された資金から得られた利益はほとんどが海外で再投資されるため、帳簿上は日本企業の黒字であっても、事実上は流出したまま返ってこないお金です。このような動きが大きくなればなるほど、国内経済を沈滞させ、デフレ圧力を生みます。
こうしてインフレ圧力とデフレ圧力が相殺し、日本経済は今後も盛り上がりを欠く展開がメインシナリオとなるでしょう。
仮に人手不足がAIやロボットによって解消されれば、労働者の賃金は上がらずインフレ圧力が弱まり、さらにデフレに傾く可能性もあります。
今後の日本経済が想定どおり盛り上がらず、インフレ率が2%程度かそれ以下で推移する場合、日銀が金利をどんどん上げていく必要がありません。
さらに、金利上昇がGDPの2倍以上に膨れ上がった国債の利払い費を増加させる点も忘れてはいけません。結局のところ、現在と変わらない程度の緩和的な金融環境が続く可能性が極めて高いでしょう。
この項であげてきたさまざまな問題が解決しない限り、日銀が金融引き締めに転じることはほぼないと考えられます。
固定金利と変動金利どちらがいい?
ここまで住宅ローンの2つの方式である「固定金利型」と「変動金利型」について詳しく説明してきました。
マイナス金利解除を経て通常の金融政策へと移行した今後、住宅ローンはこの2方式のうちどちらのほうが有利になるのでしょうか。
結論からいうと、今後も引き続き、変動金利型住宅ローンのほうが固定金利型より低い金利で推移していく可能性が高いといえます。
その理由を解説します。
固定金利の上昇
固定金利型住宅ローンの金利は、日銀によるマイナス金利の解除を待たず、すでに2022年以降緩やかに上昇してきています。
住宅金融支援機構が提供する固定金利型の住宅ローン「フラット35」の金利(借入期間が21年以上35年以下、融資率が9割以下、新機構団信付きの場合)を見ると、2021年までは1.3%程度で推移していたのが2022年には1.53%まで上昇し、2023年3月には1.96%をつけました。その後はいったん1.72%まで下がったものの11月には再度1.96%をつけ、その後は1.8%付近で推移しています(2024年5月時点)。
固定金利型住宅ローンの金利が2022年から上昇に転じたのは、そのベースとなる「長期金利」が上昇したからです。
日銀が誘導する短期金利は現在までゼロ金利のままですが、市場における国債の売買によって決まる長期金利(10年物国債の利回り)は、2022年に入って0.25%まで上昇しました。当時、日銀は長期金利の変動幅を制限する「イールドカーブコントロール」政策を取っており、長期金利は上限0.25%に制限されていたものの、上昇機運を受け上限に張り付いていたのです。
ここで、日銀は2022年12月の政策決定会合で、長期金利の変動幅を0%を基準に±0.5%に広げると発表します。すると長期金利はたちまち上昇し、今度は0.5%付近に張り付くこととなりました。
2021年から激しいインフレ圧力が世界経済に襲いかかっており、2022年8月には米国の消費者物価指数が前年同月比で9%上昇のピークに達します。日本にも少し遅れてインフレの波が押し寄せ、日銀も経済情勢に反して長期金利を押さえつけておくことができなくなっていたのです。
さらに2023年7月、日銀は長期金利変動幅の上限を1.0%に引き上げます。すると10月末には長期金利は0.975%に到達。2024年3月にイールドカーブコントロール政策が解除され長期金利が自由化された結果、2024年4月末時点の長期金利は0.9%前後で推移しています。
日銀による制限が外れた長期金利は以前より変動しやすくなっており、固定金利型住宅ローンの金利も同様に変動しやすくなっているといえます。
変動金利が固定金利を上回る可能性は低い
前項でふれたとおり、固定金利型住宅ローン金利はマイナス金利政策・イールドカーブコントロール政策が解除される前から上昇しています。2024年5月時点で、フラット35(全期間固定)の金利が1.8%となっています。
これに対して、変動金利型住宅ローンの金利はまだまだ低水準にあり、複数行が金利0.3%台の商品を提供しています。
仮に変動金利型の金利を0.4%としても、固定金利型の金利差は1.4%です。固定金利型のほうが有利になるためには、変動金利型の金利が1.4%以上上昇する必要があります。
過去、日銀が短期金利を調節する際には、0.25%刻みでの上げ下げが通例となっています。つまり変動金利型の金利が1.4%以上上昇するためには、今後少なくとも6回の金利上昇が必要です。
日本経済は、2006~2008年の短期間を除き、過去20年以上にわたってゼロ金利継続を余儀なくされるほど低迷を続けてきました。それがここにきて、海外初のインフレを契機に賃金上昇がついてきたからと言って、即座に6回もの利上げに耐えうるほどの成長力を取り戻したと考えて良いのでしょうか。
賃金の実額からインフレ率を差し引いた実質賃金は、いまだマイナスで推移しています。株価や都心の不動産価格ばかりが上昇していますが、実体経済の成長力はまだまだ盤石とはいえません。
わずか0.1%のマイナス金利を解除するだけで大きな騒ぎになっているのに、6回もの利上げがごく近い将来やってくるとはさすがに考えにくいでしょう。
すなわち、近く固定金利型住宅ローンが変動金利型より有利になる可能性は低く、まだまだ変動金利型で組むほうが有利な時期は続くと考えられます。
万が一に備えた対策
とはいえ、変動金利型住宅ローンの金利が上がらないと高をくくるのも得策ではありません。
万が一を考え、対策を知っておくことは有益です。
自宅をリースバックする
自宅のリースバックとは、不動産会社や住宅販売会社などの「リースバック事業者」に自宅を売却したのち、その旧自宅に賃料を支払って住み続けることができるサービスです。
リースバックは「セール&リースバック」とも呼ばれ、売却と同時に賃貸借契約を結ぶことになります。
リースバックは、これまで住み替えや相続対策などの目的で多く利用されてきました。住み替え資金を先に確保してから実際に住み替える家をゆっくり探せる、相続の面倒を避けるために自宅を換金したうえで、住み慣れた家で暮らし続けられるといった利便性があるためです。
リースバックは、金利上昇による返済額増加のリスクから逃れる手段としても活用することができます。
自宅を売却して住宅ローンを一括返済してしまえば、金利上昇の不安から逃れることができます。そのうえで、家賃を支払って住み慣れた家での生活を続けることができるのです。引っ越す必要がないので、通勤の便や子どもの学校が変わる心配もありません。
リースバックした家に何年住めるかは、賃貸借契約次第になります。
普通借家契約も賃貸期間(主に2年)はありますが、借主の意思で更新できるため、基本的には希望する限り住み続けることが可能です。
まとめ
住宅ローンの2つの方式である、固定金利型と変動金利型について詳しく見てきました。
固定金利型は市場で決められる長期金利に、変動金利型は日銀が誘導する短期金利に連動します。
変動金利型は半年ごとに金利の見直しがあるため、短期金利が上昇すれば返済額も増加するリスクがあります。これに対して、固定金利型は契約期間内は返済額が変動することはなく、金利変動リスクは完全に回避できます。
とはいえ、現段階では変動金利型がおすすめであることは変わりません。
金利変動リスクを利用者が負う変動金利型に対して、銀行が負う固定金利型はその分金利が高くなっています。金利差は現状で1.4%に開いており、少なくとも6回の利上げがおこなわれるまでは変動金利型のほうが有利です。日本経済に6回の利上げを耐えるほどの体力がついているとは現時点では考えにくいうえに、日本銀行も当面は緩和的な金融環境が続くとしています。
ただし、そうはいっても日本経済に急速な変化が起こる可能性もゼロではありません。
人手不足を背景に賃金上昇が本格化し、同時に生産性の高い産業へのお金と労働力の移動がスムーズにおこなわれて、日本経済の黄金時代がやってくる可能性もまったくないとはいえないからです。そうなれば金利は上昇し、住宅ローンの返済負担も増加します。
万が一の金利上昇局面に備えておくことも大切です。
その方法として、リースバックを検討してみるのも有効でしょう。
自宅をリースバックすると、不動産会社や住宅販売会社などに自宅を売却したあと、その旧自宅に賃料を支払って住み続けることができます。
自宅を売却して住宅ローンを一括返済してしまえば、金利上昇の不安から完全に逃れられるうえに、家賃を支払って住み慣れた家での生活を続けることができるのです。