生活スタイルの変化や住み替えのため、住宅ローン返済中だけど持ち家を売却したいと考える方は少なくありません。しかし、家を売っても住宅ローンが完済できない場合、「そもそも売れるのか」「他に方法はないのか」不安に感じると思います。
そこでこの記事では、マイホームの売却を検討している方に向けて、まだ住宅ローンが残っている家の売却方法を解説します。売却前に確認すべきことや成功のポイントも紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
INDEX
住宅ローン返済中でも持ち家は売却可能!
住宅ローン返済中でも持ち家の売却は可能です。
ただし、住宅ローンが残っている家には、金融機関によって抵当権が設定されています。抵当権とは、購入する土地や建物を担保とする権利です。貸主が債務(借金)を返済できなかった場合、金融機関は抵当権に基づいて家を競売にかけ、その売却額を債務の返済にあてられます。
抵当権付きの不動産は、基本的にそのまま売却できません。つまり、住宅ローン返済中の持ち家を売却するには、金融機関に抵当権を抹消してもらうために、住宅ローンを完済する必要があります。
ローン返済中の持ち家を売却する前に確認すべきこと

ローン返済中の持ち家を売却する前に、家の売却額と住宅ローンの残債を把握する必要があります。住宅ローンの残債が家の売却額を上回る場合は「オーバーローン」、下回る場合は「アンダーローン」と呼ばれ、どちらに該当するかによって対応が異なるためです。
住宅ローン残債が売却額を下回る「アンダーローン」の場合は売却額で住宅ローンを完済できます。
オーバーローンかアンダーローンかは、以下の手順で確認できます。
- 住宅ローンの残債を確認する
- 家の売却額を調べる
- 売却額でローンが完済できるか確認する
住宅ローンの残債を確認する
まずは住宅ローンの残債を確認しましょう。確認方法は3つあります。
- 返済予定表:住宅ローンを借りている金融機関が発行する書類。月々の返済額や借入金残高が記載されています。返済予定表を用いてどのようなスケジュールで返済していくのか、再度確認しましょう。
- 融資残高証明書:年末時点での住宅ローン残債を公的に証明する書類。毎年10〜11月頃、金融機関から郵送されます。発行の手続き後、通常1.2週間程度で受け取ることができます。
- インターネットサービス:インターネットバンキングの導入された金融機関なら、住宅ローンの残債をWeb上で確認できます。
確認方法がわからない、書類を紛失してしまったなどの場合は、借入先の金融機関に問い合わせてください。
家の売却額を調べる
次に、持ち家をいくらで売却できそうか売却見込み価格を調べましょう。不動産会社に査定依頼するのがおすすめです。
不動産会社の査定は主に「簡易査定」と「訪問査定」に分類されます。
簡易査定は、不動産会社のサイトに所在地や床面積などの物件情報を入力するだけで、物件のおおまかな市場価値を算出してもらえる気軽さが特徴です。
一方、訪問査定は、不動産会社の担当者が現地を訪れ、物件の外観や内観、部屋の内部状況などを見て査定するため、より具体的な査定額を知ることができます。
また、国土交通省「不動産情報ライブラリ」では、実際に取引された不動産の成約事例や都道府県ごとの地価を確認できます。
売却額でローンが完済できるか確認する
最後に、持ち家の売却額で住宅ローンの残債を完済できるか確認しましょう。
ただし、住宅ローンの残債より家の売却代金が上回っていれば良いわけではありません。不動産会社に支払う「仲介手数料」や、契約書などに課される印紙税、引っ越し代などの諸費用もかかるためです。また、持ち家の売却で利益が出ると「譲渡所得税」を課される場合があります。予期せぬ資金不足で困らないよう、これらの費用も考慮して計算してください。
参考:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
アンダーローンなら売却額で住宅ローンを完済可能
アンダーローンであれば、家の売却額で住宅ローンを完済できます。ここでは3つの売却方法を解説します。
アンダーローンの持ち家を売却する方法①売り先行

売り先行は家を売ってから新居を探す方法で、流れは以下のとおりです。
- 持ち家(物件)の売却活動
- 買い主への持ち家(物件)の引渡し・売却代金の受け取り・住宅ローンの返済
- 新居探し・購入契約
- 新居のローン手続き
- 新居入居
家の売却価格が決まってから新居探しを始めるため、資金計画を立てやすいのが大きなメリットです。家を売ってから新居のローンを組むため、二重ローンの心配もありません。
そのため、売り先行による持ち家の売却は、まとまった資金を準備する余裕のない方に適しています。
アンダーローンの持ち家を売却する方法②買い先行
買い先行は新居を購入してから家を売る方法で、流れは以下のとおりです。
- 新居探し・購入契約
- 新居のローン手続き
- 新居入居
- 持ち家(物件)の売却活動
- 買い主に持ち家(物件)の引渡し・売却代金の受け取り・住宅ローンの返済
新居探しに時間がとれる買い先行は、妥協せずに次の家を選べるメリットがあります。しかし、新居を購入してから持ち家が売れるまでの間は二重ローンとなるため、比較的資金に余裕のある方に適しています。
アンダーローンの持ち家を売却する方法③リースバック
「売却しても今の家に住み続けたい」「新居をゆっくり探したい」という場合は、リースバックも選択肢も検討してみましょう。
リースバックとは、自宅を売却したあとも賃料を払って住み続けられる方法です。他にも、家を早期に現金化できる、固定資産税などの維持費がかからないなどのメリットがあります。住み慣れた環境を変えたくない方や、ゆっくり新居を探したい方に適しています。
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住宅ローンが残っていてもリースバックは可能?メリットと注意点も解説
住んだままで持ち家を売却するには?リースバックの特徴や不動産売却との違いについて
アンダーローンで返済中の持ち家を売却するときのポイント
住宅ローン返済中の持ち家を売却するときのポイントは以下のとおりです。
- 「買い先行」ではなく「売り先行」で売却進める
- 複数の不動産会社に査定を依頼する
- 売却にかかる費用や手数料を把握する
- 媒介契約の種類を把握する
- ローン返済にあてられる金額を増やす工夫をする
「買い先行」ではなく「売り先行」で売却を進める
アンダーローンの持ち家を売却する方法に「買い先行」と「売り先行」があるとお伝えしました。住宅ローン返済中の持ち家を売る場合、基本的に資金計画が立てやすい売り先行をおすすめします。
旧居の売却より先に新居を購入する買い先行では、旧居と新居、両方のローン支払いが生じて、返済負担が重くなります。少しでも高く家を売るためには、時間をかけて買い主を選べ、希望金額での売却を実現しやすい売り先行が適しています。
複数の不動産会社に査定を依頼する
査定の基準は不動産会社ごとに異なります。査定価格に数万円もの差が生じる可能性もあるため、複数社の数値を比較することは適正な相場の把握に役立ちます。そのため、不動産会社に査定を依頼するときは、複数社にお願いしましょう。
家の売却活動を安心して任せられるよう、取引実績や担当者の対応を見て信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。
媒介契約の種類を把握する
不動産の媒介契約には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。
一般媒介契約:複数の不動産会社に依頼でき、自分で買い主を見つけて直接契約(自己発見取引)も可能です。
専任媒介契約:一般契約とは異なり1社のみの依頼となりますが、自己発見取引は可能で、不動産会社には販売状況の報告義務がある契約です。
専属専任媒介契約:専任媒介と同じく1社限定となり、専任媒介よりも不動産会社の販売活動報告義務がより厳しくなり、自己発見取引ができない契約です。
媒介契約の種類について理解したうえで自分にあった契約手段を選びましょう。
売却にかかる費用や手数料を把握する
住宅ローンの残債より家の売却代金が上回っていたとしても、アンダーローンだと安心するのはまだ早いです。
不動産の売却には仲介手数料や印紙税、引っ越し代などの諸費用がかかるため、売却額のすべてが手元に残るわけではありません。一般的に、諸費用は売却金額の約5~8%とされています。どのような費用がどの程度必要になるのか、あらかじめ計算しておきましょう。
また、家を売却して利益が出た場合、「譲渡所得」として所得税と住民税がかかります。持ち家の売却時には軽減措置として売却利益から3,000万円の特別控除を受けられるため、こういった特例も活用してください。
ローン返済にあてられる金額を増やす工夫をする
家の売却にかかる諸費用を節約すれば、ローン返済にあてられる金額が増え、今後の負担を軽減できます。
不動産会社の仲介手数料を安くできないか交渉する、司法書士に依頼するのではなく自分で抵当権の抹消登記をおこなう、内覧の際はハウスクリーニングを頼まず自分で清掃するなど、可能な範囲で費用の節約に努めましょう。
オーバーローンで住宅ローンを滞納し続けた場合
住宅ローンの残債が家の売却額を上回るオーバーローンの場合、通常の方法では持ち家を売却できません。家の売却金でローンを完済できないという資金回収リスクに基づき、金融機関が売却を認めないケースが多いためです。
しかし、オーバーローンで自宅を売却できないからといって住宅ローンを滞納し続けると、最終的に自宅は競売にかけられてしまいます。また、競売にかけられて持ち家が売却されても売却代金で完済できなければ住宅ローンはなくならず、返済の義務は継続します。
競売は市場価格と比べて6〜8割程度の価格でしか売れないため、ローンを完済できない可能性が大きいです。その他にも、強制的に追い出される、執行官による自宅の調査でプライバシーが侵害される、ご近所に知られるなどのデメリットがあります。そのため、住宅ローンの滞納は避けましょう。
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オーバーローンの持ち家を売却する方法

オーバーローンの持ち家を売却する方法は3つあります。
①自己資金で差額を補てんする
一つ目は、預貯金の補てんによって住宅ローンを完済する方法です。金融機関の許可を受けられる場合が多い傾向にあります。アンダーローンと同様、抵当権の抹消および市場での売却が可能となります。自己資金で差額を賄う場合は、事前に返済方法を金融機関に相談しましょう。
②住み替えローンを利用する
住み替えローンとは、今住んでいる家の住宅ローンの残債と新居の購入資金をまとめて借りられるローンです。持ち家の売却金でローンを完済できない場合でも、自己資金を使わずに家の買い替えができます。
ただし、今の住宅ローンの残債と新居の購入資金を支払える返済能力が求められるため、審査は厳しい傾向です。また、住宅ローンと比較して住み替えローンの金利は高いため、毎月の返済額も高くなります。
③任意売却する
任意売却とは、金融機関に相談してローン返済が難しいと判断された場合、特別に合意を得て不動産を売却する方法です。
市場価格に近い金額で売れる、引っ越しのスケジュールを決められる、住宅ローンの滞納を周囲に知られずに済むなど、競売よりも有利な条件で持ち家を売却できます。
ただし、特殊な取引形態であることから対応していない不動産会社もあるため、任意売却の取引実績を持つ不動産会社に依頼する必要があります。
また、任意売却だけでなくリースバックにも対応している業者に依頼すれば、任意売却とリースバックの併用も可能です。
以下の記事では、任意売却とリースバックの併用を解説しています。
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リースバックと任意売却の違いは?併用するメリットや注意点を解説
離婚時の持ち家の売却に関する注意点

ここからは、離婚時の持ち家の売却に関する注意点を解説します。
- 不動産と住宅ローンの名義人を確認する
- 住宅ローンの残債分与方法を確認
- 共有名義の不動産を売却するには同意が必要
- 連帯保証人の解除
不動産と住宅ローンの名義人を確認
不動産の名義人とは、土地や家などの所有権を有する方です。原則として不動産の売却は、不動産の名義人しかできません。
また、離婚後に名義人以外の方がそこに住み続ける場合、名義人と連絡を取り合う必要があります。このため、法務局で不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、不動産が誰の名義になっているかを調べましょう。
ただし、不動産の名義人と住宅ローンの名義人は異なる場合があります。
住宅ローンの名義人とは、住宅ローンの返済義務を負う人です。住宅ローンの支払いに関わる方は、借りた本人である主債務者、主債務者と連帯して返済義務を負う連帯債務者、債務者がお金を返せない場合のみ返済義務を負う連帯保証人などに分類されます。
住宅ローンの名義人は契約書で確認できます。もし契約書を紛失した場合は、借入先の金融機関に問い合わせましょう。
住宅ローンの残債分与方法を確認
夫婦が結婚してから購入した不動産は、単独名義と共有名義どちらの場合でも、ローンを含めて離婚時の財産分与の対象となります。
財産分与とは、共同生活によって夫婦が形成した財産を公平に分配する仕組みで、分配割合は原則として夫婦で1/2ずつです。
アンダーローンなら売却代金を折半すれば良いですが、オーバーローンの場合、ローン返済をどちらがどの程度負担するか決める必要があります。
一般的には、ローン返済を引き受ける方が預貯金を多めにもらうなどして、全体として半分ずつの財産分与が実現するよう調整するのが一般的です。
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離婚したら持ち家のローンはどうなる?対処法・売却方法をケース別に徹底解説
共有名義の不動産を売却するには同意が必要
戸建てやマンションなどの不動産が夫婦共有名義である場合、売却には相手の同意が必要です。
共有名義のまま、どちらか一方が住み続けることもできますが、将来家を売ったり貸したりする際に相手の同意が必要となるため、特別な事情がない限りは単独名義に変更しましょう。
ただし、住宅ローンが残っている場合は、家やマンションの名義は勝手に変更できません。住宅ローンが残っている状態で共有状態を解消するには、財産分与の一環としてどちらかの共有持分を相手に渡す、自己資金を補填してローンを完済するなどが必要です。
連帯保証人の解除
連帯保証人とは、主債務者がお金を返せない場合、代わりに借金の返済責任を負う方です。
住宅ローンが残っている場合、離婚を理由とした連帯保証人の解除はできません。連帯保証はあくまでも金融機関との契約であり、名義人の離婚と住宅ローンの返済は関係がないと考えられているためです。
離婚して連帯保証人を解除したい場合は、金融機関に相談し、住宅ローンの完済や対象の不動産の売却、住宅ローンの借り換えなどを検討しましょう。
まとめ
住宅ローン返済中の持ち家を売却する方法は、ローンの残債が家の売却額を上回るオーバーローンか、下回るアンダーローンかで異なります。
まずは、住宅ローンの残債と持ち家の売却見込み価格を調べて、どちらのケースに該当するか確認しましょう。
また、やむを得ない事情で売却を検討しているけれど、本当は今の家に住み続けたい方には、リースバックという選択肢もあります。リースバックとは、売却後も賃貸として今の家に住み続けられる方法です。
一建設株式会社の提供する「リースバックプラス+」では、お客様の利用目的や状況に合わせた2つのプランを提供しています。
賃貸として住んだ長さに応じて再購入時の価格が下がるという、将来の選択肢を残せる「標準プラン」。
早期の買い戻しを計画している方向けの「定期プラン」では、1年間賃料が0円になる「賃料優遇タイプ」と、契約期間を2年~5年と限定することで、買い戻し価格が売却価格と同額となる「買戻優遇タイプ」の2つを用意しております。
このように、一建設株式会社の「リースバックプラス+」では、将来設計に合わせたプランを選択できます。無料のお試し査定もあるため、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。
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