お金の話
「維持管理編」
“維持費”対決
~戸建てvsマンション~
戸建てとマンション、どちらを選んだらいいのでしょうか。これは、自分の家が欲しいと思ったときに、
真っ先に悩む問題です。戸建てとマンションは、購入費用だけではなく、維持費にも違いがあります。どのような
部分にどれくらいの維持費がかかるのかを知って、戸建てとマンションを選ぶための材料にしてみましょう。
戸建とマンションの維持費にはどのような種類があるの?
住宅の購入を検討する際に忘れてはならないのが、維持費です。どうしても購入費用が気になってしまい見落とされがちなのですが、主に以下の6種類の維持費があるのです。
・固定資産税
・都市計画税
・修繕費(マンションの場合は修繕積立金)
・管理費(マンションの場合のみ)
・火災保険料や地震保険料
・自治会費用など
維持費は、戸建とマンションの両方とも「家を所有する限り、継続してかかるもの」です。一つずつ見ていきましょう。
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物を所有している人に課せられる税金で、税金の支払先は市町村(東京23区内は東京都)になります。
自治体によって税率は異なりますが、一般的に「固定資産税評価額×1.4%」で算出されます。また、新築時の軽減措置や、建築後の経過年数に応じた経年減価補正もあります。
都市計画税は、市街化区域内に土地や建物を所有している人が市町村(東京23区内は東京都)に支払う税金です。市街化区域内に住宅を持たない人には課税されず、固定資産税同様に、毎年1月1日時点で土地・建物を所有している人に課税されます。
都市計画税の税額は、「固定資産税評価額×0.3%」となり、都市計画法に基づいて行う「都市計画事業」や、土地区画整理法に基づいて行う「土地区画整理事業」に使われます。
なお、軽減については、各自治体の条例に基づいて行われていますので、住宅の購入予定地域の市町村で確認するとよいでしょう。
ご参考1:固定資産税評価額について
固定資産税や都市計画税の算出時に必要な「固定資産税評価額」は、各市町村(東京23区は各区)が決定しています。
土地については、公示価格の約70%が固定資産税評価額の目安です。しかし、その土地がどのような場所にあるかによっても固定資産税評価額は違ってきます。たとえば、土地の形状や、道路との接し方、場所(市街地・農村地帯)などで違うのです。
建物の固定資産税評価額の計算は、再建築費や建物の損耗状況(経年減点補正率)などを基準として算出する方法が取られています。新築物件の固定資産税評価額の目安は、各自治体の評価員(不動産鑑定士など)が国の定める固定資産評価基準によって算定します。なお、固定資産評価額は家屋の構造や用途、床面積などによっても異なるのが特徴です。
また、土地・建物の固定資産税評価額は、原則3年に1度見直しを行っています。これを「評価替え」と呼んでいます。評価替えによっては、固定資産税・都市計画税の税額が変わることもあるため、納税通知書は必ずチェックしましょう。
なお、これから建築予定の戸建て・マンションの場合は、どのような建物になるかが分からないため、まだ固定資産税評価額が定まっていません。目安を確認したい場合には、販売元に尋ねてみてください。
ご参考2:新築住宅の固定資産税軽減について
床面積が50㎡以上280㎡の新築住宅を購入した場合、次のように一定期間の軽減措置があります。
一般住宅 | 長期優良住宅 | |
---|---|---|
戸建て | 3年間:2分の1に軽減 | 5年間:2分の1に軽減 |
マンション | 5年間:2分の1に軽減 | 7年間:2分の1に軽減 |
※長期優良住宅で固定資産税軽減を受けたい場合は、「長期優良住宅認定通知書」または、その写しを市区町村に提出することが求められます。
※軽減されるのは120㎡(課税床面積)までの部分についてかかる固定資産税です。
この軽減措置は、2022年3月31日までに新築された住宅が対象となり、戸建ては4年目、マンションは6年目から通常の固定資産税額に戻ります。
また、2022年以降に住宅購入を検討している人は、2022年3月31日以降の軽減措置期間延長など、今後の動向を注視しておきましょう。
せっかく住宅を購入してもメンテナンスをせずにいると、経年劣化が早まり建物などに不具合が生じるかもしれません。それを防ぐためのメンテナンス費用が「修繕費」となります。
マンションの場合は、購入時から「修繕積立金」という名目で毎月徴収されるケースが通常ですが、ここで積み立てられたお金は、十数年ごとの大規模修繕などに充てられます。契約時にまとまった修繕金を先払いしたり、修繕時に追加金を支払ったりするマンションも多いでしょう。
さらにマンションの場合は、用部分の維持や管理にかかる費用として「管理費」も徴収されます。この管理費では、管理人の人件費、共用部分の清掃や清掃道具にかかる費用、照明器具の電球などの消耗品にかかる費用をはじめ、管理組合の運営費、共用部分の損害保険料などが賄われています。また、マンションによっては、修繕積立金が、管理費の名目で徴収されているケースもあります。
株式会社東京カンテイが2020年5月に発表した「マンションのランニングコスト最新動向」によると、管理費と修繕積立金を合わせた平均額は右記のようになっています。
マンションを所有し続ける限り、この負担は避けられないことを覚えておきましょう。
地域 | 月の平均管理費+修繕積立金 |
---|---|
首都圏 | 2万6,911円 |
近畿圏 | 1万7,578円 |
中部圏 | 1万9,934円 |
(2019年調査時)
なお、戸建ての場合は、建物を共同で管理していないため、マンションのように毎月修繕費を積み立てるシステムはありません。定期的に修繕が必要と思われる水回りなどのために、自分で修繕費を積み立てておくと安心でしょう。
地震や台風といった自然災害の多い日本では、いつ自然災害に遭遇するか分かりません。二次災害として火災が発生する可能性もあるでしょう。そのようなときに、マイホームを守ってくれるのが次の2つの「保険」です。
【火災保険の補償内容】
・火災で生じた損害を補償
・落雷・破裂・爆発などで生じた損害を補償
・風災・雹(ひょう)災・雪災で生じた損害を補償
・水濡れ、盗難で生じた損害を補償
【地震保険の補償内容】
・地震・噴火で生じた損害を補償(地震が起因となる火災など)
・地震によって起こった津波が原因の損害を補償
火災保険のみでは地震が原因の火災は補償されません。一方、地震保険は単体で加入することはできず、火災保険とセットで加入する保険です。
火災保険は、損害保険会社によってプランや補償内容が若干異なるため、同じ建物かつ同じ保険金額でも、保険会社によって支払う保険料が違ってきます。
しかし、地震保険はすべての損害保険会社で保険料が同じです。これは、地震保険が政府と損害保険会社が法律に基づき共同で運営している保険だからです。地震保険を比較検討する必要はないので、しっかりと覚えておきましょう。
地震保険の保険料は、以下のように地域ごとに決められています。
都道府県 | イ.構造 (主として鉄骨・コンクリート造建物) |
ロ.構造 (主として木造建築) |
---|---|---|
千葉・東京・神奈川・静岡 | 2万7,500円 | 4万2,200円 |
埼玉 | 2万400円 | 3万6,600円 |
茨城・徳島・高知 | 1万7,700円 | 4万1,800円 |
宮城・山梨・愛知・三重・大阪・和歌山・香川・愛媛・大分・宮崎・沖縄 | 1万1,800円 | 2万2,100円 |
福島 | 9,700円 | 1万9,500円 |
北海道・青森・岩手・秋田・山形・栃木・群馬・新潟・富山・石川・福井・長野・岐阜・滋賀・京都・兵庫・奈良・鳥取・島根・岡山・広島・山口・福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島 | 7,400円 | 1万2,300円 |
※2021年以降保険始期の場合の保険料です。
※保険金額1,000万円当たり、保険期間1年ごとの保険料です。
戸建ての場合、転居してきたタイミングで自治会や町内会への加入を求められることがあります。加入する場合は、毎月もしくは毎年などの費用がかかります。
金額は自治会や町内会によってさまざまで、月に数百円~数千円ほどの幅があります。
各家庭から集められたお金は、清掃活動や防犯活動、行事運営などに使われるのが一般的です。
ちなみに、自治会・町内会への加入は、個人の自由となり法律などで義務付けられてはいません。そのため、万が一「新居への入居と同時に自動加入になっていた」といった場合でも抜けることは可能です。
マンションの場合は、「管理組合」があります。管理組合とは、マンションを購入した人で構成されている団体のことです。区分所有法で設立および区分所有者(マンションの購入者)の加入が義務付けられているため、自分の意志で抜けることはできません。
管理組合では、それぞれの区分所有者が共有する財産(この場合はマンション)の管理ルールを定めています。たとえば、設備や建物の修繕、維持管理の方法です。このルールに則り、管理費はマンションのごみ置き場など共有部分の清掃、管理人の人件費などに使われています。
戸建てにはどれくらいの維持費がかかるの?
ここまでにご紹介した通り、戸建てを所有する場合の維持費には、「固定資産税・都市計画税」「修繕費用」「火災保険・地震保険」などがあります。それでは実際に戸建てにはどれくらいの維持費がかかるのでしょうか。およそのシミュレーション額を見てみましょう。
下記ような条件で年間の固定資産税の税額を計算してみました。
※固定資産税率は1.4%と仮定します。
- ・固定資産税評価額
- 土地部分:2,000万円
建物部分:1,000万円
- ・1㎡当たりの固定資産税評価額
- 土地部分:8万円
- ・敷地面積
- 250㎡
【土地部分の固定資産税】
まず、住宅用土地の課税には、次のような特例措置があることを把握しておきましょう。
- 土地の種類
- 固定資産税課税標準額
- 小規模住宅用地(200㎡以下の部分)
- 課税評価額の6分の1
- 一般住宅用地(200㎡超の部分)
- 課税評価額の3分の1
先に固定資産税課税標準額を算出し、算出された金額に固定資産税の税率をかけて税額を計算します。このケースでは、土地が200㎡を超えますので、「200㎡以下」「200㎡超」の2つに分けて計算します。
- ・200㎡以下部分の課税標準額
- 200㎡×8万円×6分の1×1.4%=約3万7,300円
- ・200㎡超部分の課税標準額
- 50㎡×8万円×3分の1×1.4%=約1万8,600円
- ・土地の固定資産税評価額
- 「約3万7,300円+約1万8,600円 =約5万5,900円」となります。
【建物部分の固定資産税】
下記ような条件で年間の固定資産税の税額を計算してみました。
1,000万円×1.4%=14万円
※この計算では、新築時の固定資産税軽減措置や経年減価補正を考慮しておりません。
軽減措置経過後の固定資産税の目安としてお考え下さい。
土地・建物それぞれの合計額から、例にした戸建ての固定資産税は「約19万5,900円」ということになります。なお、この固定資産税は1年間分となりますので、1ヶ月あたりでは「約1万6,300円」となります。
長く住めば、当然家も傷んできます。以下は戸建ての場合の主な修繕箇所と費用の目安をシミュレーションした結果となります。
修繕箇所 | 修繕が必要になるまでの年数 | 修繕費用 |
---|---|---|
キッチン・お風呂・トイレなどの水回り | 10~15年 | 100万~150万円 |
シロアリなどの防虫関連 | 5年 | 20万円 |
給排水管 | 15~20年 | 60万~70万円 |
床下 | 20年 | 30万~40万円以下 |
屋根 | 20年 | 110万円 |
壁紙・内装 | 20年 | 60万~70万円 |
外壁 | 20年 | 100万円 |
玄関 | 20年 | 50万円 |
修繕箇所によっては、100万円以上のまとまった費用がかかる場合もあり、大きな負担になってしまいます。そのため、数年から数十年後の修繕に備えて、入居時から月数万円の積み立てを行うことをおすすめします。
購入時に住宅ローンを組む場合、火災保険への加入は必須となっているケースが多いようです。ローン完済後の火災保険加入は任意ですが、災難はいつやって来るかわかりませんので備えはしっかりしておきたいものです。
各損害保険会社のプランや保険料を見比べて、自分の家に合った保険を選びましょう。
一般的に保険料は、戸建てのほうがマンションよりも高く、コンクリートなどの耐火建築物が木造建築よりも低くなる傾向があります。建物の評価や所在地などでも変わりますので、契約時によく確認しておきましょう。
また、地震保険については、住宅ローン返済時から加入は義務化されていません。しかし、こちらも火災保険同様に備えておくことをおすすめします。
マンションにはどれくらいの維持費がかかるの?
次はマンションの維持費について、およそのシミュレーション額を見てみましょう。マンションの場合も主な維持費は、「固定資産税・都市計画税」「修繕積立金」「管理費」「駐車場代」「火災保険・地震保険」「専有部分の修繕費用」などが挙げられます。
マンションの場合でも、敷地持分割合に応じて土地の固定資産税を支払う必要があります。なお、敷地持分割合は、専有部分の登記簿で確認できます。
次のような条件で、マンションの固定資産税を計算してみました。
- ・固定資産税評価額
- 土地部分:2,000万円
建物部分:1,000万円
- ・専用面積
- 80㎡
- ・敷地面積
- 700㎡
- ・敷地持分割合
- 12万分の3,000
【土地部分の固定資産税】
まず、自分の住宅用土地の面積を算出します。
700㎡×12万分の3,000=17.5㎡
マンションの土地の固定資産税計算でも、固定資産税課税標準額の特例措置があります。この例では17.5㎡ですので、固定資産税評価額を200㎡以下の場合に適用される「6分の1」にできます。
これによって
「2,000万円×6分の1×1.4%=約4万6,600円」
が土地の固定資産税として算出されました。
【建物部分の固定資産税】
建物部分の固定資産税評価額は1,000万円となるため、以下のように算出します。
1,000万円×1.4%=14万円
※この計算では、新築時の固定資産税軽減措置や経年減価補正を考慮しておりません。
軽減措置経過後の固定資産税の目安としてお考え下さい。
土地・建物それぞれの合計額から、例にしたマンションの固定資産税は「約18万6,600円」ということになりました。なお、この固定資産税は1年間分となりますので、1ヶ月あたりでは「約1万5,500円」となります。
前述の東京カンテイの調査によればマンション修繕積立金の平均額は下記のような数字となっています。
・首都圏:7,826円
・近畿圏:6,232円
・中部圏:7,393円
積み立てられた修繕積立金は、外壁工事などの大規模修繕に利用されます。
こちらも東京カンテイの調査の数字です。
・首都圏:19,085円
・近畿圏:11,346円
・中部圏:12,541円
首都圏のマンションの管理費は1ヶ月あたり2万円近い費用となり、マンションを所有している限り払い続けなければなりません。管理費として徴収されたお金は、共有部分の維持管理のために利用されます。
マンション内に駐車場を借りる場合、住宅ローンの返済額や修繕積立金、管理費などに含まれているケースもありますが、これらと駐車場代が別のケースもあります。
また、駐車可能台数が少ないなどの理由で、マンション内に駐車場を確保できず、近隣などの駐車場を借りるケースもあるでしょう。場所によっては高額になる可能性がありますので自家用車を所有する人は、事前に駐車場代も確認しておきましょう。
マンションでの火災保険加入は、法律で義務付けられているわけではありません。しかし戸建て同様に住宅ローン返済期間中の加入は金融機関との契約条件となっているケースが多いようです。
マンションは戸建てとは異なり、隣の世帯との距離が非常に近い場合もあります。万が一に備えて、住宅ローンの返済が終わっても火災保険の加入を継続することをおすすめします。
マンション外壁や、ロビー・エレベーターなどの共有部分の修繕については、修繕積立金から支払われますが、専有部分の修繕については自費で行います。
キッチン・トイレなどの水回りや、壁紙・床材など、年月とともに劣化していく箇所に備えて修繕費用を用意しておきましょう。
維持費のメリット・デメリット比較
戸建てとマンションの維持費について、それぞれに想定されるメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。当然、どちらが良いというわけではありませんが、戸建て・マンションを迷っている場合は、一つの検討材料にしてみてはいかがでしょうか。
戸建て
- ・メリット
- 管理費や修繕積立金が必須ではない
修繕のタイミング・修繕箇所・費用を自分で決めることができる
- ・デメリット
- 修繕の規模によっては、まとまった費用がかかる
すべて自分たちで管理・保全する必要があるため想定外の維持費も考えられる
マンション
- ・メリット
- 共有部分の管理や保全を自分で行う必要がない
修繕タイミングを自分で考える必要がない
- ・デメリット
- 修繕積立金、管理費、駐車場代(車所有の場合)が必要
管理組合への加入が必須
個人的には不要でも行わないといけない修繕もある
維持費も含めた多方面からの検討を
戸建てとマンションのいずれも、購入価格はもとより維持費もある程度の負担になることがお分かりいただけたでしょうか。
また、戸建てとマンションの維持費の違いによって、想定されるメリット・デメリットも異なってきます。
維持費で、戸建てとマンションのどちらかを選ぶわけではありませんが、納得のいく家を手に入れるためには、多方面から入念に検討することをおすすめします。