リースバックは自宅を売却した後も住み続けられるサービスですが、当然ながら所有権は買い手の業者に移ります。そこで気になるのが、「自宅の再購入はできないのか」というポイントです。今回はリースバックで再購入は可能なのか、買い戻し特約や売買予約とは何なのかについて分かりやすく解説します。
INDEX
リースバックで資産の再購入は可能?
リースバックとは、自宅の売却と同時に賃貸借契約を結んでそのまま住み続けられるサービスです。通常の売却と同様、契約後は自宅の所有権が買い手の業者へ移ることになります。
しかし、リースバックでは一度売却した自宅も再購入して所有権を取り戻せるサービスがあることをご存知でしょうか。本記事では、リースバック買戻しの方法や、成功させるためのベストなタイミングなどをご紹介します。
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リースバック買い戻しの方法
リースバックで買い戻しをする方法は、「売買予約による買い戻し」と「買い戻し特約」の2種類です。どの方法を用いるかはリースバック業者によって異なる他、それぞれ効力や買い戻し価格などが異なります。
以下より、売買予約と買い戻し特約の詳細を解説します。
①買い戻し(売買予約)
多くのリースバック業者が用いている方法は、売買予約による買い戻しです。後述する買い戻し特約は民法で要件が厳しく定められていることから、売買予約が一般的な方法とされています。なお、双方の同意があれば必ずしも民法上の買い戻し特約を用いることはありません。
売買予約における仕組みを要約すると、「もう一度売買契約の予約をすること」です。いわば業者と利用者の約束に過ぎないため、民法上の要件は適用されず、買い戻し期間や売買代金は自由に設定できます。ただし買い戻し特約のように登記はできないため、第三者に権利を主張する対抗力や法的拘束力に欠けることはデメリットです。
売買予約による買い戻しは、法的な効力は弱くとも決まった期間で確実に資金を用意できるかが不安な方に適しています。
②買い戻し特約
買い戻し特約とは、不動産の売主が借主に対して一定期間内であれば買戻せる権利として、民法第579条で定められた特約です。具体的には、不動産を買い戻し特約付きで売却すると、売買契約の際に買主が支払った代金(または双方で合意した金額)・契約費用の合計を売主が返すことで、売主は不動産を買い戻すことが可能になるとされています。
なお、民法上では買い戻しの要件に関して以下のように定められています。
- 目的物が不動産であること
- 「買い戻し特約」は売買契約と同時にすること
- 買い戻しの代金が最初の売却金や契約費用の合計を超えないこと
- 買い戻し期間は10年以内であること
- 買い戻し期間を定めなかったときは、5年以内に買い戻しをすること
売買予約による買い戻しよりも法的拘束力が強く、万が一買主が勝手に家を売却しても売主は買い戻しの権利を行使できます。しかし上記の要件を満たせなければ買い戻しは不可となるため、ハードルが高いという難点があります。
買い戻し(売買予約)と買い戻し特約の違いとは?
売買予約による買い戻しと買い戻し特約の仕組みは記載の通りですが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、契約のタイミング・期限・金額・対象の資産・権利という4つの観点から違いを解説します。
契約成立のタイミング
売買予約による買い戻しの場合、売買契約と異なるタイミングで契約をしても成立します。一方で買い戻し特約は、売買契約と同時に契約しなければ成立しません。
買い戻しの期限
売買予約による買い戻しは、売買契約から買い戻しまでの期限が設定されません。そのため、自分のペースで資金を用意して買戻せます。
買い戻し特約には、民法で「10年以内に買い戻すこと」と期限が定められています。たとえ買主と売主の双方で10年以上の期限に合意したとしても、法律上は許されないということです。なお、契約時に具体的な期限を定めていないと、民法580条に基づき5年以内に買い戻さなければなりません。
買い戻し価格
売買予約による買い戻しだと、買い戻し価格を自由に設定できます。そのため業者が独自に設定した価格で買い戻すことになりますが、一般的には売却代金よりも高くなります。
一方、買い戻し特約での買い戻し価格は「売却代金+契約費用」の合計を超えてはならないことになっています。買い戻し価格が明瞭な一方、経年で減価している物件に契約当時と同等の金額を支払う必要がある点は留意しておきましょう。
対象の資産
売買予約による買い戻しは、不動産・動産のどちらも対象です。しかし買い戻し特約に関しては、買い戻す資産は不動産に限られます。
権利
売買予約による買い戻しは、「予約完結権」という権利にもとづき行われます。民法第556条では、売買の予約について「相手方が売買を完結する意思を示したときから効力が生じる」とされています。この意思表示で売買契約を成立させる権利が、予約完結権です。予約完結権は、登記で第三者に優先権を主張できます。しかし仮登記に遅れる抵当権などが存在する場合、その抵当権の名義人から承諾書を得なければなりません。
買い戻し特約では契約を締結した売主に「買戻権」という権利が付与され、所有移転登記と同時に規定の情報を用いて申請をすることになります。仮に買戻権を行使して所有権移転登記がされたあとに抵当権が設定されても、この抵当権は売主の買戻権に対抗できません。
つまり、買い戻し特約の方が第三者への対抗力が強いということです。
リースバックで買い戻しを利用するケース
リースバックで買い戻しを行うケースとしては、「一時的にまとまった現金が必要になりリースバックを利用した場合」が挙げられます。
例えば住宅ローンを組んで自宅を購入したものの、収入減少などの理由から返済が難しくなり、ローン完済のためにリースバックを利用する方は少なくありません。とはいえ将来的には自宅の所有権を取り戻したいと考え、契約時に買い戻しを約束するというケースです。
また、一時的にまとまった現金が必要となった際、リースバックで売却金を得てから、資金繰りが落ち着いたタイミングで自宅を買い戻すといったケースも考えられます。
詳細は後述しますが、買い戻しを利用するにはあらかじめ契約時に条件を定めたうえで約束をする必要があります。しかし買い戻しが認められない場合もあるため、注意しましょう。
リースバックで買い戻しができないケース
リースバックの買い戻しはすべてのケースで利用可能というわけではなく、以下の場合は買い戻しを認められないことがあります。
家賃の支払いを滞納している
リースバック後は家賃を支払いながら自宅に住み続けることになりますが、その家賃を一度でも滞納すると買い戻しの権利が剥奪される可能性があるため注意が必要です。
また、賃貸では家賃を3ヵ月以上滞納すると強制退去となる可能性が高まります。物件の借主を守るために「借地借家法」という法律がありますが、そこでは正当な事由があれば貸主からの契約解除が認められると定められているからです。家賃の滞納において「正当な事由」となる具体的な期間は定められていませんが、一般的には3ヵ月以上で契約解除事由と認められる傾向にあります。
買い戻しに必要な資金が足りない
買い戻しにかかる代金は少なくとも家の売却金額と同等またはそれよりも高額な資金が必要となります。
また買い戻しには後述するように「売買予約」と「買い戻し特約」2つの方法がありますが、「買い戻し特約」は買い戻しを行う期間の上限は民法で定められています。そのため自分の好きなように長い期間をかけて資金を用意することはできません。
必要な資金が用意できなければ、当然ながら買い戻しは不可能です。上記を踏まえたうえで、毎月家賃を支払いながら計画的に資金を調達することができるのかを考えて、本当に買い戻しができるのかを検討する必要があります。
なお、売買予約は買い戻し金額を自由に設定できますが、買い戻し特約の要件に基づき、「買い戻しの代金が最初の売却金や契約費用の合計を超えないこと」といった条件を先方に提示してみることもおすすめです。理解を得ることで買い戻し金額を、家の売却金額と同等程度におさえることができるかもしれません。
契約時に買い戻しの条件を定めなかった
基本的に、買い戻しは最初の売買契約と同時に条件を取り決めておく必要があります。契約時に定めておかないと、後から買い戻しを断られるリスクを伴うからです。
また、買い戻しの条件は必ず書面に明記することも重要です。口約束だけではその条件は保障されず、買い戻しを断られたり条件の認識が食い違ったままとなったりする恐れがあります。
リースバックで買い戻しをしたいと考えている場合は、契約の時点でその意思を確定させ、書面に残すようにしましょう。
リースバックの買い戻しでよくあるトラブル例
リースバックの買い戻しにおいて、「こんなはずではなかった」と後悔するようなトラブルに発展するケースも珍しくありません。ここでは、買い戻しの際に起こりがちなトラブルの例を2つご紹介します。
トラブル例①:買い戻し価格が高すぎる
業者から高額な買い戻し価格を提示され、買い戻しができないというトラブルです。リースバックの買い戻し価格は売却代金の1.1~1.3倍と、最初に得た資金を上回るケースが一般的です。そのため資金の用意が難しく、買い戻しを断念せざるを得ない方もいます。
一建設のリースバックプラスには、ご自宅の売却価格と同額で買い戻しができる「定期プラン(買戻優遇タイプ)」があります。このプランであれば、買い戻し価格があらかじめ決まっているため、資金を用意しやすくなります。
なお、リースバックの買い戻しでは住宅ローンを組めない可能性があります。収入や信用情報に問題がない人であればローンの審査に通りますが、任意売却とセットでリースバックを利用した場合はブラックリストに名前が記載されます。ブラックリストに記載されている間は住宅ローンを組むことができません。また、買い戻しを目的とした住宅ローンそのものを受け付けていない金融機関もあるため注意が必要です。
リースバックで買い戻しをするとなれば、必要な現金を貯めて一括で買い戻す方法が確実です。
トラブル例②:契約時に約束した条件で買い戻せなかった
リースバックの契約時、口約束だけで買い戻し価格を決めることはトラブルの元となります。例えば、当初想定していた以上の買い戻し価格を請求されるリスクが生じます。せっかく計画通りに資金を用意できても、後から高額な価格を提示されれば買い戻しは叶わなくなります。
また、買い戻しそのものが口約束だと、後から勝手に家を売却されたり買い戻しを拒否されたりするトラブルにも発展しかねません。
上記のような事態を防ぐためには、買い戻しをすることはもちろん買い戻し価格や期間など、条件の詳細を契約書に明記しておくことが大切です。
なお、買い戻しに対応しているリースバックの場合、売買契約書や賃貸借契約書に加えて「再売買の予約契約書」を締結することもあります。
リースバックでベストな買い戻し期間はいつ?
買い戻し特約では買い戻し期間が最長10年までと定められていますが、売買の予約による買い戻しにおいてもベストな買い戻し期間は10年と言えます。
買い戻しでは通常の住宅購入と同じく住宅ローンを組めますが、先述の通りブラックリストに名前が記載されている間はローンを組めません。しかしブラックリストに記載される期間はおよそ5年間、個人再生や自己破産などを行っている場合はおよそ10年間となります。これらの期間を考慮すると、事故情報がある人でもローンを組んで無理なく買戻せるのは10年後ということです。
金融機関は複数の信用情報機関に加盟していることが多く、いちど事故情報を残してしまうと他の金融機関でローンを組む際も審査に影響するため注意しましょう。
なお、自分がブラックリストに記載されているかどうかは各信用情報機関に情報の開示請求を行えば確認できます。住宅ローンを利用して買戻す場合は、ブラックリストから自分の名前が消えていることを確認しておきましょう。
たとえ現金一括で買い戻すにしても、リースバック中は毎月家賃を支払いながら資金を形成していく必要があります。ご自身の経済力を踏まえ、支払い方法や買い戻し期間を慎重に検討することが大切です。
リースバックの買い戻しを成功させるためのポイント
リースバックの買い戻しで思わぬトラブルに見舞われないためにも、以下3つのポイントを押さえておきましょう。
家賃は滞納しないこと
リースバックを行う以上、家賃は毎月適切に支払い続ける必要があります。家賃の滞納が3ヵ月以上続くと、強制的に契約解除となり退去を迫られます。退去をすれば当然ながら家を買い戻すことができなくなるため、契約の前に無理なく支払える賃料となっているかどうかを必ず確認しましょう。
なお、リースバックの家賃は家の売却代金に業者が設定した利回りをかけた金額となります。つまり売却代金が低ければそれだけ家賃も安くなるため、必要に応じて業者と相談しながら売却代金を調整しても良いでしょう。
賃貸借契約は「普通借家契約」を選ぶ
リースバックでは売買契約と同時に賃貸借契約を結ぶことになりますが、その際用いられる契約種別は「普通借家契約」と「定期借家契約」のどちらかです。
普通借家契約とは一般的な賃貸住宅の契約でも用いられる契約種別で、正当な事由がない限りは借主の意思があれば契約を更新できます。そのため、長期的に住み続けたい場合に最適な契約種別です。
一方で「定期借家契約」とは一般的に2~5年間程度の契約期間が定められている契約種別で、契約期間満了後は契約完了となり、更新することができません。
短期間で買い戻しに必要な資金を調達できる見込みがあれば定期借家契約でも良いですが、時間をかけて資金を調達する場合やブラックリストから名前が外れるタイミングで買い戻したい方は、普通借家契約がおすすめです。
買い戻し条件は書類に明記
買い戻しにおけるトラブル例としてもご紹介した通り、買い戻しを口頭だけで約束すると「家を勝手に売却された」「買い戻し価格が当初の約束と違う」などの事態に陥る恐れがあります。
そのため、リースバックの契約をする際は、物件を買い戻す旨・買い戻し価格・買い戻し期間など買い戻しの条件を、書類に明記しておくことが大切です。書類に明記したうえで契約を締結すれば、後々の業者側の勝手な条件変更を抑止することができます。
なお、買い戻し期間については「〇年」と具体的な期間を示すのではなく、「期限は自由」といった条件にするとより安心できます。
「買い戻し価格は固定で買い戻し期限は任意」といったように、できるだけご自身が有利に買い戻せるような条件を明記するのが理想的です。
まとめ
リースバックでは、いちど売却した家を「買い戻し」として再び購入することができます。買い戻しには「売買の予約による買い戻し」と民法の要件に基づく「買い戻し特約」がありますが、一般的に用いられるのは売買予約による買い戻しです。しかし、リースバックの買い戻しにはさまざまなリスクが伴うため、本記事でご紹介した成功のポイントを押さえることが大切です。また、一建設の「リースバックプラス+」には、より買い戻しに注目した「定期プラン(買戻優遇タイプ)」があります。このメニューであれば、買い戻し価格が高くなった、といったトラブルはありません。
買い戻しありのリースバックは、「一時的にまとまったお金が必要だけど、自宅の所有権を手放したままにはしたくない」方の資金調達方法として適しています。買い戻すための資金調達計画をしっかりと立てるなど、ご自身にとって有利な取引となるように意識しましょう。