リースバックとは、自宅を売却してもそのまま住み続けられる新しい資産活用法です。売却後も賃貸借契約を結ぶことで、現在の住まいをそのまま利用できます。
売却代金を一時金として手に入れながらも、生活スタイルを変えずに将来的な転居や再購入が可能ですが、家賃の支払いが毎月発生します。
本記事では、リースバックの家賃が払えなくなった場合や、払えなくなる前にすべき対策などをわかりやすく解説します。
一建設の「リースバックプラス+」では、通常のリースバックのメリットに加えて、将来の暮らしを積極的に築くためのさまざまなサービスが提供されています。ご家族のライフスタイルに合わせて選べる新しいリースバックであり、ライフサイクルの変化にも柔軟に対応できます。
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リースバックで家賃が支払えなくなる場合
リースバックで家賃が支払えなくなる主な理由としては、以下の2つが挙げられます。
- 収入の減少
- 出費の増大
例えば、リストラによる失業や事業の失敗、本人や家族の病気・ケガによる医療費の増大など、想定外の事態で収入が減ることで家賃を支払えなくなるケースが多いです。リースバックでは持ち家を売却してまとまった資金を得られるため、その資金を家賃に充てるのであれば当面は収入の状況にかかわらず支払いに困ることはないでしょう。
他にも、契約更新時に家賃が値上がりして、当初想定していた金額を大幅に超え、支払いが難しくなるケースも存在します。
契約解除の目安
リースバックで家賃を支払えなくなったら、その物件から退去しなければなりません。ただし即時退去というわけではなく、一定期間の猶予が設けられます。
契約内容によって異なる場合もありますが、一般的には3ヵ月の家賃滞納で賃貸借契約が解除となります。借地借家法では契約解除に値する滞納日数が数字として明記されているわけではないものの、1~2ヵ月程度では解除事由として成り立たないと過去の判例から解釈されています。
ちなみに、借地借家法とは賃貸借契約における借主の権利を守るための法律です。借地借家法では、貸主から契約を解除するためには、正当な理由が必要とされています。家賃の不払いによって貸主から契約解除するには、借主との間で信頼関係が破壊されていることが正当事由の要件となります。家賃滞納が3ヵ月程度続いている場合が目安の一つです。
なお、家賃滞納により契約解除の通知が届いても物件に住み続けた場合は、契約解除から約3ヵ月程度で強制退去が執行されます。
リースバック後の家賃が払えなくなってから退去までの流れ
家賃を滞納してから退去となるまでの大まかな流れは、以下のとおりです。
●借主に督促がおこなわれる
↓
●保証人への督促がおこなわれる
↓
●内容証明郵便による通知が届く
↓
●契約解除通知が届く
↓
●退去
管理会社が家賃の滞納を把握すると、およそ1ヵ月以内に借主本人への支払督促がおこなわれます。督促の仕方は手紙・電話・メール・直接の来訪などさまざまです。それに借主が応じなかった場合は、保証人に対して支払い督促がおこなわれます。リースバックの場合、保証人は家賃保証会社である場合が多いです。なお、滞納分の家賃を家賃保証会社が支払った場合、その金額は後に家賃保証会社から請求されることも覚えておきましょう。
督促がおこなわれてからすぐには払えなくても、そう遠くない日に支払える目途が立っている場合は貸主側へ相談すれば応じてもらえることもあります。いずれにしても、督促を完全に無視するような行為は絶対に避けましょう。
借主や保証人による支払いがおこなわれなかったり支払いを拒否したりすると、滞納2ヵ月目頃に「内容証明郵便」による督促通知が届きます。内容証明郵便とは、郵便物の内容や発送・配達日について郵便局が証明するサービスのことで、貸主は万が一裁判となったときに証拠として提示するために利用します。
それでも滞納を続けていると、貸主から契約解除通知が届き、退去となります。この段階で退去をしないと、明け渡し訴訟に発展する場合があります。訴訟にかかる費用は一般的に借主側の負担になるため、裁判となる前に退去しましょう。
もちろん、退去にかかる引っ越し費用や新居で契約する際の仲介手数料、敷金などの諸費用はすべて借主の負担です。
リースバックの家賃が払えなくなる前にやるべきこと
リースバック業者への相談
家賃の支払いに不安がある場合、まずはリースバック業者に状況を説明して相談しましょう。相談なしに家賃滞納が発生するのとでは、貸主の受ける印象がまったく異なるからです。いつまでに支払えるか伝えれば、支払期日を延長してもらえる可能性もあります。貸主に相談するのは抵抗があるかもしれませんが、信頼関係を破壊しないためにも早めの相談を心がけましょう。
資金調達
リースバック業者に相談したうえで、家賃を滞納しないために資金調達をおこないます。ただ、親族などからお金を借りる場合は、信頼関係に影響が出やすいため、慎重に検討しましょう。
そこで、「住居確保給付金」という公的な救済制度の利用を検討するのがおすすめです。住居確保給付金とは、離職、自営業の廃止、または自身の都合によらない就業機会等の減少によって経済的に困窮し、住居を喪失したり住居を喪失するおそれがある方に対し、一定期間、家賃相当分の給付金を支給する制度です。
ただし、住居確保給付金の支給期間は原則3ヵ月間となっているため、家賃が払えなくなる前に早めに要件や申請方法を確認し、活用を検討しましょう。
リースバックを検討する際におさえておくべきポイント
リースバックを検討する際には、以下の3つのポイントをおさえておきましょう。
- 他の資金調達方法と比較する
- 無理のない範囲で契約する
- 資金の使い道を決めておく
各ポイントについて詳しく解説します。
他の資金調達方法と比較する
リースバックを契約する前に、まず他の資金調達方法とよく比較することが重要です。リースバック以外にも、住宅の売却や金融機関のローンなど、資金を調達するためのさまざまな手段があります。それぞれの手法の利点と欠点を慎重に考慮し、自分に適した方法を選択しましょう。
例えば、リースバックの場合、相場よりも低い価格で売却されることが多いです。そのため、価格の観点から見れば、通常の売却の方がより高値で売却できる可能性があります。また、リースバックでは家賃が割高になることがあるため、家賃負担を軽減するためには、より安い家賃の住宅に移る方が賢明です。
他の資金調達方法と比較すると、リースバックよりもお得な方法が利用できる可能性があるかもしれません。リースバックを検討する場合には、どれくらいの金額を受け取れるのか、そしていくら支払う必要があるのかを事前に確認しておくことが重要です。
無理のない範囲で契約する
リースバック業者との契約のすり合わせでは、無理なく継続できるような契約内容にすることがとても重要です。家賃を決める際には、物件の状態だけでなく、利用者の月々の家賃支払い能力も見られます。もし家賃負担に不安があるのなら、家賃を抑える方向に調整すると良いでしょう。この場合、売却時の価格は下がるかもしれませんが、家賃の滞納や退去トラブルよりは好ましい結果といえます。
契約する前に、家賃を滞納することなく支払えるプランであるかを確認しましょう。個々の状況に合わせて、契約条件を慎重に検討することが重要です。
資金の使い道を決めておく
リースバックで得た資金の使途を事前に明確に決めておくと、家賃の滞納を防ぐことができます。リースバックの場合、売却して得た資金の使い道について制限はありません。住宅ローンや借金の返済、生活費、老後資金、事業費用など、何に使うかは自由ですが、無駄遣いは避けるべきです。
リースバックを利用する際は、金融機関からの融資とは異なり、詳細な資金計画書の提出は必要ありません。しかし、無駄遣いを防ぐためにも、資金の使途を明確にしておきましょう。リースバックを利用すると、割高な家賃の支払いがあることを忘れてはいけません。また、家を買い戻したいのであれば、そのための資金を準備する必要があります。毎月の家賃をきちんと払っていけるように、計画的にリースバックを活用しましょう。
リースバックにおける家賃の決まり方
家賃を滞納しないためにも、どのようにして家賃が決まるのかを事前に把握しておくことが大切です。リースバックの場合、家賃は契約する業者によって大きく変わります。
リースバックは通常の賃貸物件とは違い、業者にとって不動産投資となります。そのため、家賃は周辺不動産の相場ではなく、物件の買取価格と期待利回りを用いて算出されます。具体的な計算式は、以下のとおりです。
【物件の買取価格×期待利回り÷12ヵ月】
期待利回りとは、物件の買取価格に対する年間の賃料の割合を指します。具体的には6~13%程度で、物件の築年数や立地などの条件によって異なります。
買取価格が高ければ家賃も高くなり、買取価格が低ければ家賃も低くなります。ただし上記は一般的な計算方法であり、他の計算方法で算出する業者も存在します。
リースバック後も無理なく家賃を支払い続けるには、買取価格が高く家賃が低い業者を選ぶことが大切です。
定期借家契約の方が安くなる場合がある
賃貸借契約には、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。長く住むには契約の更新がしやすい普通借家契約が適していますが、家賃の相場としては定期借家契約の方が安い傾向にあります。
定期借家契約は契約期間が決まっており、契約期間満了後に貸主が更新を拒否すると借主は退去しなければなりません。こういった性質上、定期借家契約は借り手がつきにくいため対策として家賃が安く設定される傾向があります。
とはいえ、リースバックの場合は再契約を前提とした定期借家契約でサービスを提供している業者もあるようです。再契約を前提にした定期借家契約の場合は家賃が安くなるとは言い切れません。
契約種別を選ぶ際は、家賃を重視するよりもまず「どれくらい住み続けたいか」を第一に考えましょう。
まとめ
リースバックの家賃滞納が続くと、退去を余儀なくされてしまいます。家賃の滞納が連続して3ヵ月続き、退去が決まった場合、滞納が始まった日から6ヵ月から1年の間に家を明け渡さなければなりません。そのため、もし滞納してしまった場合は、焦らずに誠実な対応を取ることが重要です。公的融資制度などの利用も検討してみる価値があります。ただし、家賃の滞納をできるだけ回避するために、リースバック契約を結ぶ前にさまざまな対策を講じることをおすすめします。それでも、予期せぬ状況で支払いができなくなることもあるため、困ったときはリースバック業者にまず相談してみましょう。