定年退職後の生活を豊かにするための老後資金ですが、老後資金として用意すべき具体的な金額が定まっていない、分からない方も多いことでしょう。今回は老後資金はいくら必要なのか、老後は生活費以外にどんな出費が生じるのかなど詳しく解説します。公的年金の受給額を調べる方法や、おすすめの資金調達方法もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
老後資金はどのくらい必要?
「老後資金は2,000万円必要」という説を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。これは、2019年に金融審議会 市場ワーキング・グループが発表した「高齢者における資産形成・管理」という報告書の内容が発端と言われています。
報告書によると、95歳まで生きた場合は公的年金だけで生活費を賄うことはできず、2,000万円分の赤字が発生すると予測されています。そのため、一般的に定年退職を迎える65歳までに、自主的に2,000万円程度の老後資金を用意しておくことの重要性が説かれるようになりました。
2,000万円という金額は2017年度に総務省統計局が行った家計調査に基づき、高齢夫婦無職世帯において「実収入に対し実支出の方が毎月平均で5万円ほど上回っている」というデータから算出されています。公的年金だけを頼りにした生活で毎月約5万円の赤字が出るとして、85歳まで生きれば約1,300万円、95歳まで生きれば約2,000万円を自己資金で補填する必要があります。このようにして算出された1,3000万~2,000万円が、老後資金として用意しておくべき具体的な金額ということです。
参考:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
老後の資金について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご活用下さい。
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老後の資金はいくらあれば安心?必要な生活費の目安や計算方法、貯め方を解説
本当に必要な老後の生活費の目安
老後資金は多いほど安心できるのは事実ですが、かといって2,000万円もの資金を必ずしも用意しなければならない訳ではありません。上述した資料のデータはあくまでも平均値であり、実際に必要な資金は世帯ごとの収支バランスによって決まります。自分にとって本当に必要な老後の生活費を算出するには、公的年金をはじめとする収入の見込みを把握することが大切です。
以下より、老後の収入について詳しく解説していきます。
老後の収入(主に年金)は?
2021年度に総務省統計局が公表した「家計調査報告」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の場合、実収入の平均は約23万6,000円というデータが出ています。
老後の収入は公的年金が大半を占めていますが、自営業や高齢者雇用などで働く人はその分だけ収入がプラスされます。また、不動産収入や私的年金の受給分も老後の収入として加算することができます。
しかし、老後には老後ならではのリスクも存在することを留意しなければなりません。例えば高齢による病気や運動機能の低下による医療費・介護費の発生リスク、労働が困難となり想定よりも老後の収入が減るリスクなどです。
老後も様々な収入源があるするとはいえ、同時にまとまった出費・収入減少のリスクも潜んでいます。そのため自分が将来受給できる公的年金額に加えて、急な出費に対応できるだけの資金を早いうちから増やしておくことが大切です。
参考:家計調査報告(家計収支編)2021年(令和3年)平均結果の概要|総務省統計局
自分が将来受給できる公的年金額の調べ方
老後の主な収入源となる公的年金が、いくらぐらい貰えるのか調べてみましょう。
年金には、「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」の2種類があります。国民年金は20~60歳のすべての日本人が加入しており、厚生年金は会社員や公務員が加入し受給額が上乗せされる、というのが日本の公的年金制度です。2つの公的年金は、どちらも保険料を納めた期間に応じて原則65歳以降(受給資格期間が10年以上ある場合)に受給が可能となります。
国民年金のみ保険料を支払う「第1号被保険者」と、民間会社員や公務員など厚生年金、共済の加入者である第2号被保険者に扶養されている配偶者である「第3号被保険者」は、老後に国民年金(老年基礎年金)のみ受給できます。具体的な受給額は、以下の計算式で算出が可能です。
老齢基礎年金支給額の満額×(保険料の納付月数 / 480ヵ月)
一方、国民年金と厚生年金の保険料をどちらも支払う「第2号被保険者」の場合は、以下の計算式で受給額の概算を出せます。
老齢基礎年金の受給額+老齢厚生年金の受給額(報酬比例部分+経過的加算+加給年金額)
()内の数に関しては、それぞれ以下のように計算しましょう。
●報酬比例部分
【A+B=報酬比例部分】
A:平均標準報酬額× 0.007125×平成15年3月以前の被保険者期間の月数
B:平均標準報酬額× 0.005481×平成15年4月以降の被保険者期間の月数
●経過的加算※令和4年度の単価で計算する場合
【1,621円×1.0×被保険者期間の月数-77万7,800円×(昭和36年4月以降で20~60歳未満の被保険者期間月数 / 加入可能年数×12)】
●加給年金額※被保険者期間20年以上かつ、65歳の時点で本人が生計を維持させている配偶者や子がいる場合のみ加算
- 配偶者【38万8,900円加算】※特別加算含む
- 1人目、2人目の子【各22万3,800円加算】
- 3人目以降の子【各7万4,600円加算】
なお、加給年金額を加算するには配偶者や子の年齢制限をクリアしたうえで届出を行う必要があります。
参考:老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額|日本年金機構
生活費以外に必要な老後の資金は?
老後の生活に発生する出費は、必ずしも衣食住や娯楽によるものだけとは限りません。ご自身のライフプランに応じて、以下のような費用の発生も想定しながら資金を用意しておくことが大切です。
お祝い費用
子どもがいる場合は、子どもの結婚・出産・引っ越しといったイベントごとのお祝いにかかる費用の発生も想定しておきましょう。また、孫ができれば将来的に入学や卒業などのお祝い費用や毎年のお年玉なども必要となる可能性があります。
お祝い費用は他の費用よりも高頻度で発生しやすく、総額で見ると想定以上にかさむことが多いため、自身と子ども夫婦の収支バランスを考えながら無理のない使い方を考えましょう。
リフォーム費
持ち家に長年住んでいる場合、経年劣化で建物や設備に不具合が現れるため設備修理にかかる費用も想定しておくと安心です。マンションであっても、専用部の補修費用や共用部の修繕積立金が必要になります。
また、老後の生活を見越して自宅をバリアフリー化するためのリフォームを考えている方は、その費用を用意しておきましょう。
入院、手術費用
高齢になるにつれて体力や免疫力が低下し、病気にかかるリスクが高まります。万が一ガンなどの深刻な病気にかかると高額な入院・手術費用が必要となります。たとえ医療費関連の補助制度で自己負担分を抑えられたとしても、その後の経過観察期間に決して安くない治療費が伴うものです。
入院や手術費用に関しては自己資金の用意だけでなく、早いうちから医療保険に加入することで、医療に関わる費用を幅広くカバーできます。
介護費用
自分や配偶者に介護が必要となる可能性を見越して、介護費用も用意しておくと安心です。具体的には、介護用品の購入費や訪問介護サービスの利用料などがあります。
なお、介護費用は介護保険制度を利用すれば、 認定を受けたときの年齢・所得・認定レベルに応じて自己負担分を抑えることが可能です。
葬儀代
家族や親族にかかる負担を抑えるべく、自分が亡くなった際の葬儀にかかる費用を自分で用意しておく方も多いです。葬儀代は、葬儀の形式・規模・慣習などにより具体的な金額は変わりますが、葬儀代・飲食代・返礼品などの諸費用を合わせて200万円前後を目安に用意しておくと良いでしょう。
老後資金の準備方法は?
50代後半までの年代であれば、仕事や投資で増やした資金を老後の生活に充てられます。また、退職金としてまとまった資金を得られる見込みがあるならば老後資金として貯蓄に回すことも可能です。
しかし、すでに定年退職をしている方や高齢で働くことが難しい方の場合、現状から資金を増やすことは難しくなります。十分に貯金ができないまま老後を迎えてしまうと、収入の頼りは公的年金だけとなり最低限の生活を送れるかどうかの見通しも立ちません。
こういった新たに収入を得ることが難しい方へおすすめの資金調達方法が、「リースバック」です。リースバックとは自宅を売却してまとまった資金を得ながら、その後も賃貸契約を結び自宅に住み続けられるというサービスです。リースバックで得られた資金は用途に制限がないため、生活費の補填はもちろん医療費・介護費やお祝い費用などとしても使えます。また、あらかじめリースバックで自宅を現金化しておけば、自分が亡くなった後は遺族へ平等に分配できます。分配が難しい不動産でも、リースバックなら相続争いを防ぐことが可能です。
まとめ
老後生活は公的年金だけを頼りにすると、毎月5万円程度の赤字が出る可能性が示唆されています。生活費だけでなく、家族へのお祝い費用や医療費、介護費、葬儀代など様々なシーンにおけるまとまった出費も見越した資金形成が重要です。老後資金の調達方法はさまざまありますが、持ち家があるなら「リースバック」の利用がおすすめです。ご自身の将来設計を考慮し、必要に応じてリースバックの利用も検討してみましょう。