不動産投資の団信の仕組みや役割とは?生命保険代わりになるか解説

金融機関から融資を受けて不動産投資をするとき、団体信用生命保険に加入した方がよいのだろうかと悩む投資家は少なくありません。

団体信用生命保険に加入すると、金融機関から受けた融資の返済中に万が一のことがあったとき、ローン残債が0円になります。金融機関からの融資を利用して不動産投資を始めるときは、団体信用生命保険の必要性や保障内容などをよく検討することが大切です。

今回は、団体信用生命保険の保障内容や加入するメリット、デメリット、注意点などを分かりやすく解説します。

 

 

不動産投資の団体信用生命保険の仕組み

団体信用生命保険(以下、団信)とは、不動産投資ローンの契約者を被保険者(保険の対象になる人)にして、加入する保険のことです。

団信に加入すると、ローンの契約者が亡くなったり所定の高度障害状態になったりしたとき、保険会社から保険金が支払われてローンの残りが完済されます。
保険金が支払われるのは、死亡と所定の高度障害状態になったときのみですが、がんや三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)などを保障する団信もあります。

 

団信の加入手続きをするのは、不動産投資ローンの契約を結ぶときです。不動産投資ローンを取り扱う金融機関を経由して、団信を取り扱う保険会社に申し込みをします。
基本的に引受保険会社は1つの金融機関につき1社であり、自身で選ぶことはできません。この1社から断られると、その金融機関では不動産投資ローンを組めないことになります。

不動産投資における融資に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
>> 関連記事:不動産投資で融資を受けるには?審査基準や注意点を学び投資を始めよう【リンク】

 

 

不動産投資の団信の役割

団信には、不動産投資をする投資家が万が一のときに、残された家族に大きな経済的負担が残るのを防ぐという重要な役割があります。

投資家が万が一亡くなってしまったとき、マンションやアパート、戸建て住宅などの投資物件は残された家族(遺族)に相続されます。投資物件のローンの返済中であった場合は、遺族が相続放棄を選択しない限り、残債の返済義務も相続されることになるでしょう。
投資家が団信に加入していると、万が一のときは保険金で不動産投資ローンが完済されるため、遺族は返済義務を負わずに済みます。

 

また、団信には金融機関の貸し倒れリスクを軽減するという役割もあります。ローンの返済中に契約者が亡くなると、返済が滞ってしまい金融機関は融資金を回収できなくなって貸し倒れが発生するかもしれません。
不動産投資ローンの契約者が団信に加入していると、万が一のときは保険会社から支払われる保険金で融資金を回収できるため、貸し倒れを防止することが可能です。

 

そのため、金融機関によっては、団信への加入が融資条件となっていることがあります。団信に加入する場合、ローンの借入金利に上乗せして保険料を支払います。団信への加入が融資条件である金融機関の場合、借入金利に保険料が組み込まれているのが一般的です。

 

 

不動産投資で団信に入るメリット

団信に加入する主なメリットは、以下の通りです。

  • 万が一のときに収益物件を残せる
  • ローンの返済義務がなくなる
  • 生命保険の代わりになる

 

1つずつみていきましょう。

 

万が一のときに収益物件を残せる

団信に加入することで、残された家族は返済義務のない賃貸マンションや賃貸アパートを相続できます。残された家族は、相続した物件から家賃収入を得て生活費や教育費などの支払いに充てることで、家計を楽にできるでしょう。

また、「物件の管理に手間がかかる」「賃貸経営をする時間を割くのが困難」などの理由で収益物件が不要なのであれば、売却をしてまとまった現金に換えることも可能です。

 

ローンの返済義務がなくなる

亡くなった人が残した借入金は、預貯金や不動産などの財産とともに遺産相続の対象となります。借入金を相続した家族は、亡くなった人に代わって返済をしなければなりません。
収益物件に投資をしていた人が一家の大黒柱であった場合、世帯収入の減少で、残された家族は大きな金銭的ダメージを受けているでしょう。生活費や住居費、教育費などの支払いに、不動産投資ローンの返済が重なると、残された家族の生活が苦しくなる恐れがあります。

金融機関から融資を受けて不動産投資をしていたとしても、団体信用生命保険に加入していれば、万が一のときは保険金でローンが完済されます。そのため、残された家族は融資を返済する必要はありません。

 

団信の保険金は課税対象にならない

生命保険の死亡保険金には、基本的に税金がかかります。例えば、契約者と被保険者が夫、保険金受取人が妻である生命保険に加入していた場合、夫が亡くなったときに妻が受け取る死亡保険金は「相続税」の課税対象です。
また、契約者と保険金受取人が妻、被保険者が夫である場合、夫の死亡時に妻が受け取る死亡保険金には「所得税」と「住民税」がかかります。

 

その点、団信の保険金を受け取るのは金融機関であるため、残された家族に税金が課せられることはありません。団信の保険金が支払われると「残された家族は返済が免除される」という経済的なメリットを得られますが、相続税や所得税は課税されないとされています。

不動産投資における税金に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
>> 関連記事:不動産投資の節税効果はない?!目的にあった資産形成の方法を選ぼう【リンク】

 

 

不動産投資で団信に入るデメリット

 

一方で、不動産投資ローンには、以下のようなデメリットがあります。

  • 生命保険料控除を適用できない
  • 健康状態によっては加入できない
  • 返済途中で解約・変更ができない

 

団体信用生命保険の必要性を検討するときは、デメリットも理解しておくことが大切です。

 

生命保険料控除は受けられない

生命保険料控除とは、生命保険や医療保険、がん保険などの保険料を支払った人が受けられる税の優遇制度です。生命保険料控除を適用できると、1年間に支払った保険料に応じた一定金額を年間の所得から控除されるため、所得税や住民税の負担を軽減する効果が期待できます。
生命保険料控除の対象となるのは「保険金の受取人が、保険料を払い込む本人やその配偶者、その他の親族」である生命保険です。

団信の保険金は、融資をする金融機関に支払われます。また、団信の保険料を支払っているのは、実質的には融資をする金融機関です。そのため、不動産投資ローンの契約者が団信に加入しても、生命保険料控除は受けられません。

 

金利が上乗せされる可能性がある

死亡と高度障害状態を保障する団信(一般団信)の場合、保険料は不動産投資ローンの金利に含まれています。そのため、一般団信に加入したとしても、上乗せ金利は発生せず、不動産投資ローンの返済負担は増えません。

しかし、がんや三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)なども保障する団信に加入する場合は、一般的に上乗せ金利が発生します。上乗せされる金利は団信の種類にもよりますが、年0.1〜年0.3%程度です。

 

金利が上乗せされると、毎月の返済額や総返済額は増えるため、家賃収入から支出を差し引き、手元に残る現金は少なくなります。手元に残る金額をよく確認することなく団信の保障を手厚くすると、不動産投資で得られた利益が減って損失が発生するかもしれません。

団信に加入するときは、上乗せ金利の有無を必ず確認しましょう。上乗せ金利が発生する場合は、返済負担が増えたとしてもきちんと収益をあげられるかどうかを、返済シミュレーションで確認したうえで団信に加入することが大切です。

 

返済途中で解約・変更ができない

団信の加入手続きや特約の付加ができるのは金融機関と不動産投資ローンの契約を結ぶときのみです。
不動産投資ローンの返済が始まったあとは、団信のみを解約したり付けている特約を外したりすることはできません。そのため、不動産投資ローンの契約時に加入した団信は、完済まで同じ契約内容で継続する必要があります。

 

 

団信は生命保険の代わりになるのか?

団信と生命保険は、どちらも万が一のことがあり保険会社が定める支払要件に該当したときに、保険金が支払われる商品です。
一方で、保障内容や保険金の支払われ方などに違いがあるため、団信が生命保険の代わりになるとは限りません。ここでは、団信と生命保険の主な違いをみていきましょう。

 

団信の加入条件

団信や生命保険に加入するときは、保険会社に健康状態を告知して診査を受ける必要があります。告知した内容によっては、保険会社から引受けを断られる可能性があるという点は共通しています。

告知する項目は商品によって異なりますが「最近3ヵ月以内に、医師の診察・検査・治療・投薬をうけたことがあるか」「過去3年や5年以内に所定の病気で入院や手術を受けていないか」などが問われます。

 

一方で団信と生命保険は「加入者」「加入窓口」に違いがあります。
団信に加入できるのは、これから不動産投資ローンを組む人です。不動産投資ローンを組まない人やすでに不動産投資ローンを組んでいる人は加入できません。
団信に加入するときは、金融機関を経由して申込書や告知書を提出します。

対して、生命保険に加入するときは、保険会社や保険代理店などの窓口で加入の手続きをします。商品によっては、インターネットやファイナンシャルプランナーをはじめとした専門家を経由して申し込みの手続きをすることも可能です。

 

団信の種類と保障内容

一般的な団信は、不動産投資ローンの契約者がなくなったときや所定の高度障害状態に該当したときに保険金が支払われます。所定の高度障害状態の定義は保険会社によって異なりますが「両眼の視力を全く永久に失ったもの」「言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの」などが一般的です。
また、金融機関によっては、死亡と高度障害状態に加えて、がんや急性心筋梗塞などを保障する団信を選択できます。商品と保障内容の例は、以下の通りです。

保障内容
がん保障付団信死亡・所定の高度障害状態

+

所定のがん(悪性新生物)と診断されたとき

3大疾病保障付団信死亡・所定の高度障害状態

+

がん(悪性新生物)・心筋梗塞・脳卒中

8大疾病保障団信死亡・所定の高度障害状態

+

がん(悪性新生物)・心筋梗塞・脳卒中

+

高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎(すいえん)

 

がんは、基本的に「生まれて初めて診断確定された悪性新生物」を指します。上皮内新生物や悪性黒色腫を除く皮膚がんは、保障対象外となっているケースがほとんどです。
急性心筋梗塞や脳卒中などは、診断されるだけでなく保険会社が定める所定の状態にならなければ基本的に保障の対象になりません。

例えば、急性心筋梗塞は初めて医師の診療を受けた日から60日以上、労働が制限される状態が続いたときに保障の対象となるのが一般的です。
なお、団信の保障を手厚くする場合、不動産投資ローンの借入金利に0.1〜0.3%を上乗せして保険料を支払う必要があります。

団信のラインナップや保障内容、上乗せ金利などは金融機関によって異なるため、加入時によく確認することが大切です。

 

団信の保険料

保険料の特徴保険料の支払い方法保険金の受け取り
団信一定不動産投資ローンの金利に上乗せ不動産投資ローンを融資する金融機関
生命保険年齢が上がれば、保険料も上がる口座振替やクレジットカード払い、給与天引きなど契約時に指定した保険金受取人

 

生命保険の保険料は、年齢や性別、保険金・給付金の受取額、保険期間などに応じて決まります。一般的に年齢を重ねるにしたがって、病気になるリスクは高まるため、生命保険料は高額になっていきます。
また、生命保険の保険料は、口座振替やクレジットカード払い、給与天引きなど、保険会社が定める方法で支払っていくのが一般的です。

他方で、団信の保険料は、基本的には不動産投資ローンの金利に上乗せする形で保険料を支払っていきます。通常の生命保険とは異なり、不動産投資ローンを契約する人の年齢や性別などで保険料が変わることはありません。

 

団信の保険金

団信の場合、被保険者(保険の対象になる人)が、保険会社の定める支払要件に該当すると、不動産投資ローンを融資する金融機関に保険金が支払われます。団信の契約者やその家族が、保険金を受け取れるわけではありません。
また、団信の保険金は不動産投資ローンの残債と同じ金額です。そのため、不動産投資ローンの返済が進むにしたがって、団信の保険金額は減少していきます。

一方、生命保険の保険金額は保険金や給付金の受取人に支払われます。
亡くなったときの死亡保険金を受け取るのは、生命保険の契約時に指定した保険金受取人です。医療保険やがん保険などの給付金は、基本的に被保険者が受取人となります。

 

 

団信に加入する場合の注意点

団信に加入する際は、以下の点に注意が必要です。

  • 虚偽の告知をすると保険金が支払われないことがある
  • 「ワイド団信」に加入すると上乗せ金利が発生する
  • 民間保険会社の生命保険が不要になるとは限らない
  • 生命保険の保障内容に被りがないか見直しが必要

 

団信に加入するときの注意点を1つずつみていきましょう。

 

虚偽の告知をすると保険金が支払われないことがある

団信に加入する際、現在の健康状態や過去の傷病歴を偽って告知すると、返済途中に万が一のことがあっても、保険金が支払われない可能性があります。

保険会社は、保険金の支払請求があったとき、団信の加入時に告知義務違反をしていなかったどうかを徹底的に調査します。
保険会社による調査の結果、加入時に虚偽の告知があったと判断された場合、団信の契約は解除となるため、保険金は支払われません。

万が一のことがあったときに団信の保険金が支払われないと、残された家族に返済義務が相続されることになります。家族に迷惑をかけないためにも、団信に加入する際は、保険会社から問われていることに対してありのままの事実を正確に告知することが大切です。

 

「ワイド団信」に加入すると上乗せ金利が発生する

「持病を患っている」「数年前に大きな病気を患って手術を受けた」などの理由で一般の団信に加入するのが難しいときは、ワイド団信を検討する方法があります。
ワイド団信は、通常の団信よりも告知項目が少なく、保険会社の引受基準も緩和されているため、健康状態に不安がある人でも申し込みやすいです。

ただし、ワイド団信に加入する場合は 不動産投資ローンの借入金利に0.3%程度を上乗せするのが一般的です。そのため、ワイド団信に加入すると、基本的には不動産投資ローンの返済負担は増えます。
ワイド団信を検討する際は、上乗せ金利を支払ったとしても賃貸経営におけるキャッシュフローや返済負担に問題がないかを、シミュレーションでよく確認しましょう。

 

民間保険会社の生命保険が不要になるとは限らない

団信に加入すると、万が一のときには保険金でローンが完済され、返済義務のない収益物件を家族に残すことができます。
収益物件から得られる家賃収入で、残された家族の生活費や子どもの教育費などを賄うことも可能でしょう。しかし、団信に加入しても民間保険会社の生命保険会社が不要になるとは限りません。

ご自身が亡くなったあとに、団信による保障を受けられたとしても、配偶者や子どもなどが生活に困る可能性があるのなら生命保険にも加入をしておいた方が安心でしょう。

 

生命保険の保障内容に被りがないか見直しが必要

団信に加入したときは、すでに契約している生命保険の保障内容と重複している部分がないかを確認しましょう。

例えば、民間保険会社の生命保険に加入しており、万が一のことがあったあとの遺族の生活費や教育費などが保険金でカバーできるとしましょう。
団信に加入したことで、万が一のときは物件から得られる家賃収入で遺族の教育費や生活費などをカバーできるようになったのであれば。加入している生命保険の保険金を減額して保険料を削減できるかもしれません。

団信に加入したときは、保険会社やファイナンシャルプランナーなどに相談をし、保障に過不足が生じていないかを点検することが大切です。

 

 

まとめ

団信に加入すると、不動産投資ローンの返済中に万が一のことがあったとき、保険金でローンが完済されます。自分自身が万一のとき、残された家族に返済義務を負わせたくないときは、団信に加入しておくことをおすすめします。

団信に加入するときは、過去の傷病歴や現在の健康状態をありのままに告知しましょう。偽った内容を告知すると、万が一のときに団信の保障が受けられないことがあります。

 

不動産投資をするときに団体信用生命保険に加入したいと考えている方は、新築の戸建住宅に投資をするのも1つの方法です。新築の戸建投資であれば、金融機関からの融資も利用が可能であるため、団信にも加入できます。

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