不動産投資するうえで、まず最初に理解しなければならない数字が利回りです。
利回りには「表面利回り」「実質利回り」「想定利回り」「現行利回り」があるため、それぞれの意味を理解する必要があります。
この記事では、利回りの基本とともに投資種類別の利回りや物件選びのポイントを紹介します。あくまで参考ですが、不動産投資の利回りランキングもまとめたので、参考にしてみてください。まずは不動産投資について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
>> 不動産投資の第一歩 仕組み・種類・メリット・注意点を徹底解説【リンク】
不動産投資の利回りとは?
利回りとは、投資額に対する収益性を示す指標のことをいいます。
不動産投資するうえでは、利回りは重要なポイントです。利回りの数字によって「年間どれくらい収益がでるのか」「何年で投資額を回収できるのか」等が分かります。
利回りは%で表され、数字が高いほど収益性の高い物件となります。
例えば、利回り10%よりも15%の方が、年間の収益が高くなり、投資額の回収期間も短くなるのです。
とはいえ、利回りの高さだけで判断していては思わぬ落とし穴があります。不動産投資するなら、利回りについて意味や計算方法を理解することが大切です。
利回りといっても、大きく次の4つがあります。
- 表面利回り
- 実質利回り
- 想定利回り
- 現行利回り
それぞれの利回りで内容が異なるので、意味を正しく理解するようにしましょう。
表面利回り
表面利回りとは、物件の価格に対する収益性を示す指標で、「グロス利回り」と呼ばれることもあります。
表面利回り(%)=(年間収入÷物件価格)×100
表面利回りは、物件の価格と収入だけで算出できるシンプルな数字です。
例えば、2,000万円の物件で、年間収入が250万円なら利回りは12.5%となります。
不動産会社のチラシなどで利用されるのは一般的に表面利回りと、以下で解説する想定利回りです。表面利回りは、大まかな物件の収益性を把握するのに適しています。
しかし、この数字には経費が考慮されていない点に注意が必要なのです。
実質利回り
経費まで考慮した利回りとなるのが、実質利回りで「ネット利回り」と呼ばれることもあります。
実質利回り(%)=(年間収入-年間経費)÷物件価格×100
修繕費や管理費などの諸経費を差し引いた利益で計算するので、より手元に残るお金に近い数字が分かります。
表面利回りが高くても、修繕費などが嵩み、実質利回りが低い物件は珍しくありません。
不動産投資では、修繕費や管理費などの諸経費が必ずかかるため、利回りを計算するうえでは実質利回りまで計算するようにしましょう。
想定利回り
想定利回りとは、満室時の利益を想定して計算する利回りです。
想定利回り(%)=満室時の年間収入÷物件価格×100
満室を想定した利回りのため、実際には空室の場合は想定利回りほどの利益は出なくなるので、注意が必要です。
現行利回り
実際の入居状況で収益を計算するのが現行利回りです。
現行利回り(%)=実際の年間収入÷物件価格×100
年間収入には空室分が含まれないため、想定利回りよりも実際の収入に近い利回りを求められます。
不動産投資の利回りの理想と平均
不動産投資の利回りは、一概にどれくらいというのが難しいものです。
地域や築年数・物件の状況などによって、不動産の投資物件の利回りは大きく異なります。
日本不動産研究所の2022年4月不動産投資家調査による、賃貸住宅(ワンルームタイプ)利回り調査の結果では以下のような数字が出ています。
地域 | 期待利回り |
東京 | 4.0% |
横浜 | 4.5% |
名古屋 | 4.8% |
大阪 | 4.5% |
広島 | 5.5% |
札幌 | 5.3% |
福岡 | 4.88% |
物件タイプごとでは以下の通りです。
東京 | 名古屋 | 大阪 | 広島 | 福岡 | 札幌 | |
ワンルームタイプ | 4.0% | 4.8% | 4.5% | 5.5% | 4.8% | 4.8% |
ファミリータイプ | 4.1% | 4.9% | 4.7% | 5.5% | 5.0% | 5.4% |
オフィスビル | 3.3% | 4.6% | 4.4% | 5.5% | 4.6% | 5.2% |
一般的には、新築よりも中古の方が利回りが高く、また、地域でいうと都心部よりも地方の方が利回りは高くなるのです。
しかし、地方の物件は利回りが高くても、都心程需要がなく空室リスクが高くなる可能性が高くなります。地方の物件や中古物件は購入価格が安いため利回りが高くなりますが、実際に運営するには修繕費が嵩む恐れもあるのです。
物件にもよりますが、都心部では4%以上、地方では5~6%以上あると安心といわれています。
しかし、利回りの数字だけで判断するのではなく、修繕費や需要など総合的に判断することが大切です。
不動産投資の利回りランキング
不動産投資といっても投資方法はさまざまあります。
ここでは、利回りの相場を元に投資種類別にランキングしていきます。
ただし、実際の利回りは地域や物件・資金などに大きく左右されるので、あくまで目安として活用ください。
物件の種類 | 利回り相場 |
地方戸建 | (築古)12~20%程度 |
中古アパート一棟 | 7~15%程度 |
新築アパート一棟 | 5~7.5%程度 |
中古一棟マンション | 7~12% |
中古戸建 | (首都圏)3~8% |
区分マンション | (中古)3~7% |
新築戸建 | (築浅含む)5~7.5% |
都心戸建 | (新築築浅)~4.5% |
都心ワンルームマンション | (新築)3~4.5% |
新築マンション一棟 | 3~4.5% |
中古一棟アパート
不動産投資の中でも代表的な投資である、一棟アパート投資。アパート一棟を建設・購入して運営する投資方法です。
一棟アパート投資でも、中古アパートへの投資は新築アパートよりも利回りが高く、相場は10%~15%ほどです。
中古アパートの場合、購入価格を抑えられ、一棟丸ごと購入しても2,000万円~3,000円程の場合もあるため、利回りが高くなる傾向があります。
また、アパート一棟への投資では、複数の戸数を構えられるため高い収入を見込めるだけでなく、空室リスクも抑えられます。さらに、中古一棟アパートは減価償却による税金の負担も大きく軽減できるという魅力もあるのです。
ただし、築年数が経過しすぎているアパートは修繕費が高額になる点には注意しなけらばなりません。地域によっては、需要が低く空室が多くなる可能性が高くなるため、利回りだけで判断するのは注意しましょう。
地方戸建
近年人気が高まっている戸建への投資。相続や転勤に伴い、自分の持っている戸建を投資用にと検討する人も増えています。
新たに購入する場合、地方の中古戸建は格安で入手できる場合もあるため、利回りも高く利回り相場は10%程となります。
戸建投資の場合、ターゲットがファミリー層となるため、一度入居すれば長く住み続けてもらえるというメリットもあります。
戸数を多く用意することは難しいですが、家賃設定を高くすることも可能なのである程度の収入も見込めるでしょう。
新築アパート一棟
新築一棟アパートも利回りが高く、相場は8~10%ほどです。
アパートの場合は、新築であってもマンションのように高額になることはありません。また、新築アパートであれば入居者も確保しやすく、最初の入居者には高い家賃設定をすることも可能です。
ただし、新築アパートは最初の入居者には高い家賃設定ができる反面、一度退去が出ると次の家賃を大幅に下げる必要があります。新築プレミアムによって家賃が大幅に下落する点には注意しましょう。
中古一棟マンション
中古一棟マンションは、需要の高いマンションでありながらも投資額を抑えられ、家賃の大幅な下落リスクも避けられるというメリットがある不動産投資です。
新築マンション一棟を購入する場合、億単位の資金が必要になってきます。また、新築の場合は新築プレミアムによって、一度退去が出ると家賃が大幅に下落する恐れもあるのです。
中古一棟マンションの利回り相場は7~8%といわれており、立地によっては高い家賃収入を得られるでしょう。ただし、築年数によっては修繕費が高額になる可能性がある点に注意が必要です。
中古戸建
戸建投資の中でも中古物件は、価格を抑えて投資でき、利回りも高くなります。中古の場合の利回り相場は6~8%と言われており、新築戸建よりも高い傾向があるのです。
さらに、地方の中古戸建であればより購入価格を抑えられるため、利回りは高くなるでしょう。
ただし、中古戸建は修繕費がかかったり、現代の生活に合わせてリフォームが必要なほど古い物件もあります。エリアによっては入居者付けが難しくなる可能性があるので注意しましょう。
中古戸建投資についてはこちらの記事で詳しく説明しているので、参考にしてみてください。
>> 中古戸建とボロ戸建は違う?!投資物件選びの注意点を徹底解説【リンク】
区分マンション
高額になるマンション投資でも、区分マンションであれば比較的価格を抑えて投資することが可能です。マンション1室単位で投資する区分マンション投資の利回り相場は5%~7%です。
特に都心部の区分マンションであれば需要が高く、築年数が経過していてもある程度需要が見込めるでしょう。都心部の物件であれば利回り4%以上であれば投資を検討しても良いといわれているほどです。
ただし、エリアや築年数によっては区分マンションでも物件価格が高くなります。何年でどのくらい回収ができるのか、シミュレーションした上で検討しましょう。
新築戸建
新築戸建であれば、都心から離れていてもある程度は需要も高くなります。
しかし、新築戸建は、投資価格が高くなることから利回り相場は5~6%と中古戸建よりも低くなります。
戸建投資の場合、土地の購入から必要になるとさらに利回りが低くなります。
しかし、相続などですでに土地を持っている状態であれば、新築でも利回りを高くすることができるので検討するとよいでしょう。
新築は中古のように、思わぬ修繕費が嵩むことは少なく、リフォームの必要もありません。戸建投資は、新築、中古、地方、都市と種類によってメリットデメリットがあるので、それぞれの特色を理解した上で、検討しましょう。
新築戸建投資についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
>> 戸建投資をするなら新築がおすすめ!中古物件との違いを徹底解説【リンク】
都心戸建
都心エリアで戸建投資する場合の利回り相場は7%程です。
都心部の戸建は、地方戸建よりも投資額が大きくなるため利回りは低くなりますが、地方より需要が見込めるため家賃は高く設定しやすいというメリットがあります。
駐車場も必要のないケースも珍しくなく、小さい面積でも戸建を建設できるため、都心部に土地を持っている場合に検討するとよいでしょう。
都心ワンルームマンション
区分マンションの中でも、単身者向けのワンルームタイプのマンションへの投資も人気があります。
ワンルームマンションのターゲットである単身世帯は、住居を購入するよりも賃貸する傾向があるため、需要も高くなります。また、比較的立地の良い場所でも、価格を抑えられているため、マンション投資の中でも投資しやすい種類といえるでしょう。
ただし、1室単位での投資となり家賃収入もあまり多く見込めないため、利回りはそれほど高くありません。都心エリアのワンルームマンションは需要も高く、利回りは3~5%程です。
ワンルームマンションの場合、減価償却を多く計上できないため、税負担の軽減効果は低くなります。
空室=収入ゼロになるリスクも高い点には、注意しましょう。
ワンルームマンションについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
>> ワンルームマンション投資の落とし穴。仕組みやメリットを徹底解説【リンク】
新築マンション一棟
新築マンションであれば、高い需要を見込め家賃設定も高くできます。一棟購入することで、より高額な収入を見込めるでしょう。
ただし、投資額が高額になり億単位となるケースも珍しくなく、利回りも3%程と低い点に注意が必要です。
新築マンション投資は、高額な資金が必要になりローン審査も厳しくなることから、投資できる人が限られている点はデメリットとなります。
不動産投資の利回りの注意点
不動産投資の利回りは投資判断するうえで重要なポイントです。
しかし、利回りの数字だけで判断すると失敗してしまう可能性もあるので注意しましょう。
ここでは、不動産投資の利回りに対する注意点を解説します。
注意点としては、次の3つが挙げられます。
・表面利回りだけではなく実質利回りを重視する
・利回りだけにとらわれない
・利回りは減少するもの
それぞれ詳しくみていきましょう。
表面利回りではなく実質利回りを重視する
不動産会社の広告で目にするのは、基本的に表面利回りや想定利回りです。
これらの利回りには、経費が考慮されていないため、利回りが高くても注意しなければなりません。
例えば、次の例で見てみましょう。
- 物件価格:3,000万円
- 年間収入:450万円
- 年間経費:300万円
表面利回りは次のとおりです。
表面利回り=450万円÷3,000万円×100=15%
しかし、実質利回りでは次のようになるのです。
実質利回り=(450万円-300万円)÷3,000万円×100=5%
このように、表面利回りと実質利回りには大きな差が出る可能性があります。
投資する際には、必ず実質利回りまで自分で計算するようにしましょう。
利回りだけにとらわれない
投資物件を選ぶ際には、利回りの数字だけで判断するのはおすすめできません。どんなに利回りの高い物件でも、入居者が確保できなければ収入ゼロということもあるでしょう。
築年数の古い物件は、購入価格が低い分利回りが高くなりますが、修繕費が嵩みます。実質利回りで計算していても、突発的な修繕費などでキャッシュフローが悪化するケースも珍しくないのです。
利回りの数字だけでなく、実際の物件に足を運んで物件状況や周辺状況の確認など総合的に判断するようにしましょう。また、不動産投資は家賃収入(インカムゲイン)だけでなく、出口戦略も重要です。出口戦略によって売却益(キャピタルゲイン)を得るには、価格が下がりにくく、高く売れやすい物件であるかもポイントです。
不動産投資の出口戦略についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
>> 出口戦略で不動産投資の勝ち組に!物件のポイントや売却のタイミング【リンク】
利回りは減少するもの
利回りは最初の数値をずっと維持するわけではありません。一般的に、築年数が経過することで家賃の下落や修繕費が嵩むことから利回りは減少していきます。
購入時の利回りを維持するのは難しいという点を忘れずに、長期的な収支計画を立てるようにしましょう。
不動産投資の物件選びのポイント
利回り以外にどんな点に注意して投資物件を選べばいいのでしょうか?最後に、不動産投資の物件選びのポイントとして次の5つを紹介します。
- 需要のあるエリアか
- 家賃相場は妥当か
- 住宅の設備は充実しているか
- 不動産会社や管理会社に問題がないか
- マンションの周辺は住みやすい環境か
需要のあるエリアか
利回りが高くても入居者がいなければ、利回りを実現できません。エリアの需要はしっかりとリサーチするようにしましょう。
- どんな世帯が住んでいるのか
- アクセスはいいか
- 将来地価が下がらないか
- 周辺の施設の利便性はよいか
- 開発計画の有無
- 競合の有無
ファミリー世帯が住んでいるエリアなら、ファミリー向けのマンションや戸建の需要が高くなります。
反対に、単身世帯の多いエリアで戸建を購入しても需要は見込めないでしょう。
学校や病院・市役所・買い物施設などの周辺施設も需要に影響するので、チェックすることをおすすめします。
また、開発によって需要が変化する可能性もあるので注意が必要です。学校が移転してしまう、別のエリアに大型商業施設が建設されるといった開発で、それまで合った需要がなくなってしまうケースは珍しくありません。
現在は競合がなくても、空き地に競合が建設される可能性もあるでしょう。
希望する物件のエリアは徹底的にして需要について理解したうえで、投資判断することが大切です。
家賃相場は妥当か
設定されている家賃は相場に対して適正か確認することが重要です。
高い家賃を設定すれば、その分収益を多くでき、利回りも高くできます。
しかし、周辺に比べて高すぎる家賃では入居者に避けられてしまう可能性があるので、注意が必要です。
反対に物件のスペックに対して安すぎる家賃の場合は、過去に事故があるなどで低く設定されている可能性もあります。
物件の築年数や設備の状況だけでなく、周辺の競合の家賃なども調査して、適切な家賃設定ができているのか、また、設定の根拠まで確認するようにしましょう。
住宅の設備は充実しているか
住宅の設備状況は入居者も必ずチェックする部分です。最新のものである必要はありませんが、ある程度充実しているかは大切な部分となります。
古すぎる設備や設備自体がない場合、入居者確保のため設備の設置や交換が必要となり、その費用がかかります。
また、物件によっては希望の設備の設置ができない可能性もあるので注意が必要です。設備が不十分な状態で賃貸としてスタートしても、入居者の確保は難しいでしょう。
不動産会社や管理会社に問題がないか
不動産投資は、不動産会社や管理会社がパートナーとなって一緒に進めていくものです。信頼できる不動産会社や管理会社なのかをしっかりと確認するようにしましょう。
また、マンションの場合はすでに管理会社が決まっているものです。管理会社の管理が適正かも十分に調査するようにしましょう。
管理会社は、日常的な管理をすべて任せるため、管理の質が入居者の満足度につながります。マンションなどは共有部分の状況を確認すれば、管理の質が分かります。
また、マンションの場合は修繕積立金の徴収状況もチェックすることをおすすめします。徴収が上手くいっていない場合、大規模修繕前に追加で費用を徴収される可能性があり、高額な出費となる可能性があるのです。
徴収が上手くいかずに、修繕に対応できないマンションは老朽化が進み、資産価値が下がってしまうでしょう。
投資する物件が適切に管理されているのかは、必ずチェックするようにしましょう。
マンションの周辺は住みやすい環境か
入居者を確保して長く住んでもらえるかは、周辺環境も重要なポイントとなります。
- 買物施設は近くにあるか
- 病院や学校などの公共施設の有無
- 治安
- 駅からの距離
- 道路の交通量
- 近隣トラブルや騒音トラブルがないか
上記のようなポイントもチェックするようにしましょう。
まとめ
利回りの基本や不動産投資の利回りランキング、物件選びのポイントについて解説しました。投資物件を判断する場合は、表面利回りだけでなく実質利回りまで計算する必要があります。
ただし、利回りの数字だけで投資判断するのではなく、物件の状況や周辺環境など総合的に判断する必要があります。出口戦略も踏まえると物件の価格が下がりにくく、将来的に高く売却できる物件かという点も重要でしょう。
自分にあった投資スタイルや投資目標・資産状況などに応じて適切な利回りの物件に投資できるようにしましょう。
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