マンションに住み始めて10年、ライフステージや住環境の変化をきっかけに「そろそろ住み替えを検討したい」と感じる方も多いでしょう。
この記事では、マンションの住み替えのタイミングとして10年が目安となる理由や、売却時の注意点、高く売るためのコツを詳しく解説します。記事を参考にして、納得のいく売却と住み替えを実現しましょう。
マンションの住み替えは10年が目安!その理由
マンションの住み替えは「10年」が目安といわれています。10年での住み替えが推奨される理由をわかりやすく解説します。
築10年前後のマンションは需要が高く買い手がつきやすい
公益財団法人東日本不動産流通機構の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2024年)」によると、築6年~10年の中古マンションの新規登録物件は全体の7.0%にとどまる一方で、成約物件は12.9%と需要が供給を大きく上回っています。
また、築年数ごとの中古マンションの成約率は以下のとおりです。
築年数 | 中古マンションの新規登録成約率(2024) |
築0~5年 | 31.9% |
築6~10年 | 35.6% |
築11~15年 | 36.2% |
築16~20年 | 26.7% |
築21~25年 | 23.2% |
築26~30年 | 16.6% |
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2024年)」
中古マンションは築6年から15年あたりが最も成約率が高く、15年を超えると成約率が徐々に低下する傾向にあることがわかります。そのため、築10年前後のマンションは買い手がつきやすく、売却に適したタイミングといえるでしょう。
住宅ローン控除の適用期間が10年で終了する
住宅ローン控除とは正式に「住宅借入金等特別控除」と呼ばれるもので、住宅ローンの年末残高に応じて所得税が軽減される制度です。一定期間の条件を満たすことで、住宅ローン残高の0.7%分が所得税から控除されるため、実質的に住宅ローンの金利負担が軽減できます。
住宅ローン控除の適用期間は、10年または13年と定められており、控除が終了する築10年前後に住み替えを検討することで、税制のメリットが得られます。適用期間や借入限度額はマンションの省エネ性能により異なるため、自分のマンションがどの適用区分に該当するかを事前に確認しておきましょう。
参照:国税庁「No.1212一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」
品確法の10年保証が切れてからの売却が合理的である
品確法は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略称で、新築住宅の基礎構造部分に不具合が生じた場合、引渡しから10年間は売り主による無償補修が義務付けられた法律です。そのため、10年保証が残っているうちに物件を売却すると、保証の恩恵が十分に得られない可能性があります。
また、品確法には、第三者機関が住宅性能を客観的に評価する性能表示制度があります。住宅性能評価を取得した住宅は、安全性や品質が優れた住宅として信頼されやすく、売却時にも有利に働くでしょう。
このように、品確法による10年の保証期間を経てから売却することで、合理的な住み替えが実現できます。
参照:国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」
修繕積立金の引き上げを回避できる
2021年度に国土交通省が実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事は平均して13年周期で実施されるケースが多い傾向です。大規模修繕のタイミングに合わせて段階的に引き上げられたり、場合によっては一時金を別途徴収したりするケースもあります。
そのため、築10年のタイミングで住み替えを検討することで、修繕積立金の増額や一時金の負担を回避できる可能性があります。
参照:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
税制優遇制度が受けられる
10年以上所有したマンションを売却する場合、税制優遇制度である「10年超所有軽減税率の特例」が受けられる可能性があります。この制度は長期所有したマンションを売却した際に、譲渡所得に対する税負担を軽減するための特例措置です。
適用条件を満たせば、6,000万円までの譲渡所得の税率が14.21%まで引き下げられます。通常の長期譲渡所得の税率は20.315%のため、大幅な節税が期待できます。
なお、税制優遇制度を受けるには、売却した年の1月1日の時点で10年以上保有していることが条件です。つまり、マンションを所有してから11回目のお正月を迎えているかどうかが判断基準となるため、所有期間の数え方には十分に注意しましょう。
参照:国税庁「No.3305マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
マンションを10年で住み替える場合の注意点
マンションは築10年で売るのが目安ではあるものの、一定の条件やリスクがあるため事前に確認しておくことが大切です。ここでは、10年で住み替える場合の注意点を詳しく解説します。
住宅ローンの完済と抵当権の抹消が必要
築10年のマンションを売却する際、住宅ローンの返済中でも売却自体は可能です。ただし、売却手続きを完了させるには、ローン残高を一括で返済し、契約時に設定された「抵当権」を抹消する必要があります。
抵当権とは万が一ローンの返済が滞った場合に、金融機関が物件を担保として資金を回収する権利のことです。抵当権が残っているマンションは、競売にかけられるリスクがあるため、買い手が敬遠しやすく売却が不利になります。
10年後の住み替えをスムーズにおこなうためにも、返済資金を用意し計画的に準備を進めることが重要です。
オーバーローンのリスクがある
マンションを売却する際、売却価格が住宅ローンの残債を下回ると「オーバーローン」の状態になります。オーバーローンになると売却金だけではローンを完済できず、不足分を自己資金で賄う必要があります。
資金が用意できない場合、金融機関から抵当権の抹消や住宅の売却許可が下りないケースがあるため注意が必要です。さらに、ローンが完済されていない状態で売却を進めようとすると、物件が競売にかけられ、相場よりも低い価格で手放すリスクもあります。
そのため、10年後のローン残債やマンションの資産価値を定期的に把握することがポイントです。
仮住まいが必要になる可能性がある
マンションを売却してから住み替え先を検討する場合、新居の引渡しが間に合わず、一時的に仮住まいが必要になるケースもあります。仮住まいには、以下のような費用が発生します。
- 2回分の引っ越し費用
- 敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用
- 荷物保管用のトランクルームの賃貸料
仮住まい先や住み替え先への2回分の引っ越し費用に加え、一時的な仮住まいに大型家具が入りきらない場合は、荷物の一部を保管するためにトランクルームを借りるケースも少なくありません。
また、仮住まいの期間が1年以上に及ぶ場合は、住民票の異動も必要です。住所変更にともない、郵便物の転送手続きや各種行政手続き、子どもの転校、通勤ルートの見直しなど生活面にも影響を及ぼします。
このような負担を避けるためにも、住み替え先の決定と売却のタイミングは慎重に調整しましょう。
リフォーム費用を回収できないリスクがある
築10年のマンションはそのままの状態で売るよりも、リフォームに費用をかけて見た目を整えてから売却するケースも多い傾向にあります。しかし、リフォームにかけた費用は、必ずしも売却金で回収できるとは限りません。
また、中古マンションを購入する方のなかには、自分でリフォームをする前提で物件を選ぶ方も多く、あらかじめリフォームが施された物件はかえって敬遠されることもあります。
リフォームの内装は好みがわかれるため、ハウスクリーニングなど基本的なメンテナンスを優先し必要最低限の費用で売却の計画を立てましょう。
火災保険の途中解約にも注意が必要
火災保険は、最長5年の長期契約が可能です。そのため、保険料を年払いや一括払いにしている方は、マンションの売却にともない途中解約が必要です。
途中解約をすると、未経過分の保険料が解約返戻金として払い戻されます。ただし、保険商品によっては、住み替え先でも契約が継続できる場合があります。
住み替えを考えている方は、現在契約している保険会社に早めに相談しておくと安心です。
マンションを高く売るコツ
築10年のマンションは、工夫次第で高く売却できる可能性があります。今住んでいるマンションを10年後に高く売るコツを解説します。
売り先行か買い先行かを決めておく
「売り先行」か「買い先行」かを事前に決めておくと、住み替えの準備が計画的にできるため、焦らずに適正な価格で売却しやすくなります。
「売り先行」とは、現在のマンションを先に売却し、そのあと新居を購入する方法です。一方、「買い先行」は先に新居を購入してから今のマンションを売却する方法です。2つの方法には、以下のメリットとデメリットがあります。
方式 | メリット | デメリット |
売り先行 | 新居の資金計画が立てやすい売却代金をローン返済に充てられる売却活動に時間がかけられる | 仮住まいの費用がかかる希望価格の売却が難しいケースがある |
買い先行 | 時間をかけて新居を選べる仮住まいが不要になる | ダブルローンのリスクがある資金計画が不明確になりやすい |
売り先行、買い先行にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、慎重な判断が求められます。ローン返済やスケジュールに不安がある場合は、不動産会社に相談しながら早めに進めましょう。
スケジュールに余裕を持って進める
公益財団法人東日本不動産流通機構のデータによると、物件の登録から成約までにかかる平均日数は以下のとおりです。
- 中古マンション:平均85.4日
- 中古戸建て:平均97.3日
中古戸建てよりも中古マンションの方が比較的早く売れやすい傾向ですが、焦って売却を進めると、相場よりも安く売却する「売り急ぎ」となるリスクがあります。
中古のマンションの売却には、清掃や片付けなどの準備期間を含めて一般的に3~6ヵ月程度の時間がかかります。また、新居の購入には住宅ローンの審査や契約手続きなど2~4ヵ月の期間が必要です。
物件をできるだけスムーズに売るためにも、住み替えを考え始めてから半年~1年程度のゆとりを持ったスケジュールを確保しておくと安心です。
参照:公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た 首都圏の不動産流通市場(2024年)」
売却のタイミングを考慮する
築10年の中古マンションを高く売るには、売却のタイミングを見極めることがポイントです。特に、不動産の取引が活発になりやすい春や秋に売却活動をスタートしましょう。
春や秋は新生活や新学期、転勤のシーズンで家を探す方が多い傾向です。また、気候も穏やかで、内覧や物件選びがしやすい時期です。
このように需要が高まる時期に合わせて中古マンションを売り出すことで、高値での売却が期待できます。
複数の不動産会社に依頼する
不動産会社への査定を依頼する場合は1社だけに絞らず、複数社に依頼するのが成約率を高める方法の一つです。一社のみに依頼した場合、比較対象がないため、提示された査定価格が妥当かどうかの判断がしにくくなります。
複数社の不動産会社に査定を依頼することで、以下のようなメリットがあります。
- マンションの適正価格が把握できる
- 各社の対応や販売戦略を比較できる
物件を早く、高く売るためには、まずは複数の不動産会社に査定を依頼して、情報を集めることから始めましょう。
内覧時の見せ方を工夫する
築10年が経過しているマンションは、内覧時の見せ方も重要なポイントの一つです。ちょっとした工夫で、この家に住みたいと思わせる演出ができます。
内覧時には、次のような見せ方を工夫すると効果的です。
- 内覧用のきれいなスリッパを用意し、清潔感を演出する
- 玄関の靴はすべて片づけ、広さと明るさを引き立てる
- 水廻り(バスルーム・洗面所・トイレ)はツヤと清潔感を意識して仕上げる
- バルコニーの床をウッドパネルや人工芝で整え、くつろぎスペースとして演出する
- リビングや玄関に花や観葉植物を飾り、内覧者におもてなしの気持ちを伝える
汚れがひどい場合は、ハウスクリーニングを利用しても良いでしょう。内覧者に細やかな気遣いをすることで、買い手の記憶に残る印象のいい物件につながります。
まとめ
マンションの住み替えは、需要の高い築10年が目安です。住宅ローン控除や品確法、税制優遇制度など資金面の制度を有効活用すれば、住み替えの資金計画も立てやすいでしょう。
築10年のマンションは、スケジュールに余裕を持ち売却のタイミングを計ることで、高値での売却が期待できます。そのためには複数の不動産会社に事前に相談しておくと、売却や住み替えがスムーズです。
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