家の売却で売却益が出た場合は、譲渡所得税や住民税などの税金が発生します。また、売却の手続きにともなって登録免許税や印紙税、仲介手数料にかかる消費税など、見落としやすい費用も少なくありません。
税金は、家の所有期間や控除制度の利用によって大きく変わるため、仕組みを事前に把握しておくことで、家の売却がスムーズに進められるでしょう。
この記事では、家の売却でかかる税金の種類や計算方法、控除制度などを詳しく解説します。家の売却に関する税金を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
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家を売却し利益が出た際に発生する税金
家を売却し利益を得ると、譲渡所得税・住民税・復興特別所得税が生じます。それぞれの特徴や計算方法、支払い時期などを解説します。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、家の売却で得た「譲渡所得」に課される税金です。
譲渡所得税は、売却価格から家の購入価格や売却時の仲介手数料などの諸経費を差し引いて計算します。また、建物の購入価格は時間の経過とともに価値が減少するという考え方から、「減価償却費」を考慮して計算するのが特徴です。
譲渡所得税は、家を売却した年の翌年に確定申告をおこない納税します。
参照:国税庁「土地や建物を売ったとき」
住民税
住民税は、都道府県民税と市区町村税の総称で、居住する地域の行政サービスを維持するために住民が支払う税金です。譲渡所得に税率をかけて計算します。
家を売却した年の翌年に確定申告をし、申請した年の6月以降に住民税を納付します。6月や8月など4期の末日までに一括で納付する方法(普通徴収)と、年金や給与の支給額から差し引く方法(特別徴収)を選択しましょう。
復興特別所得税
復興特別所得税は、東日本大震災の復興に必要な財源を確保するため、2013年1月1日から2037年12月31日までの所得に対して課される税金です。
復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じて計算します。譲渡所得税と同じく、家を売却した年の翌年に確定申告をする際に、所得税と合わせて納付しましょう。
売却手続きで必要となる税金
家の売却手続きを進めると、さまざまな税金の手続きが必要となります。ここでは、特に重要な登録免許税・印紙税・消費税の特徴や計算方法、支払い時期などを見ていきましょう。
登録免許税
不動産の売却では、抵当権の抹消や所有権の変更などの手続きが必要です。この登記手続きで発生する税金を、登録免許税といいます。
登録免許税の金額は登記内容により異なり、抵当権の抹消をする場合は、不動産1件ごとに1,000円が課されます。書類の取得や司法書士の報酬などとともに請求されるため、登記の申請時に収入印紙で支払いましょう。
印紙税
印紙税は、契約書や領収書などの「課税文書」に課される税金です。家の売却では不動産売買契約書が課税文書とみなされます。
税額は、記載金額により変動するため注意しましょう。例えば、記載金額が1,000万円以上5,000万円以下の場合は、2万円の印紙税率がかかります。
なお、記載金額が10万円を超え、2014年(平成26年)4月1日から2027年(令和9年)3月31日までに作成されるものは、軽減措置の適用対象です。
参照:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
消費税
家の売却では、条件により消費税が発生します。
例えば、個人で不動産を売却する場合は、消費税はかかりません。しかし、国内での取引であり、対価を得ておこなわれるサービスには消費税がかかります。
不動産会社を経由して家を売却する際にかかる仲介手数料は、サービスの対価とみなされるため、消費税の課税対象です。家の売却では、どこに消費税がかかるのかを事前に把握しておくと良いでしょう。
家の売却で利用可能な控除制度
控除制度を活用すれば、家の売却で発生する税負担の軽減が期待できます。家の売却で利用できる特例を知り、上手に活用しましょう。
3,000万円特別控除の特例
「3,000万円特別控除の特例」は、譲渡所得税から最高3,000万円控除できる制度です。以下の条件に該当する場合は、特例が適用されます。
- 売却物が居住用である
- 売り主と親族関係でない
- 売却の前年から前々年のあいだに家の買換えや交換に関する特例を受けていない など
譲渡所得税が3,000万円を超えても特別控除は利用できますが、適用除外条件が細かく決められているため注意しましょう。
参照:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
特定の居住用財産の買換え特例
「特定の居住用財産の買換え特例」は、新たな家を購入する際に、家の売却で生じた譲渡所得にかかる税金を将来に繰り延べられる制度です。以下の条件を満たした場合、特例が適用されます。
- 売却年の前年から翌年までの3年間に、新しい家を購入している
- 売却する家と新しい家の双方が居住用である
- 旧居の売却価格が1億円以下である など
特定の居住用財産の買換え特例は3,000万円特別控除の特例と異なり、納税が免除されるのではなく、あくまで繰り延べされる仕組みです。購入した家を売却する際は、繰り延べた税金の支払いも必要となるため注意しましょう。
参照:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
軽減税率の特例
「軽減税率の特例」は、家を10年以上所有した後に売却する際に、譲渡所得にかかる税率を軽減できる制度です。譲渡所得6,000万円以下の場合、所得税が15%、住民税5%となる税率が、所得税10%、住民税4%になります。
なお、譲渡所得が6,000万円を超えた場合、超過分には通常の税率が適用されます。
軽減税率の特例は、3,000万円特別控除の特例と併用が可能です。複数の特例を組み合わせれば、大幅な節税が期待できるでしょう。
参照:国税庁「土地や建物を売ったとき」
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、相続した家の売却時に利用可能な制度です。譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
特例の対象は、主に以下の特徴に当てはまる物件です。
- 相続や遺贈で取得した居住用家屋や敷地
- 2016年(平成28年)4月1日から2027年(令和9年)12月31日の間に売却した不動産
特例を受けるには、売却代金が1億円以下であり、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するなど、さまざまな条件が定められています。
なお、ほかの特例との併用はできないため、注意が必要です。
参照:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
家を売却し損失が出た場合に利用可能な控除制度はある?
家を売却して損失が出た場合は、「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が利用できます。住宅ローンが残っている家を売却して譲渡損失が発生した際に、ほかの所得と相殺できる特例です。
特例を適用するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 売却した家は居住用として活用している
- 家を売却した年の1月1日時点で家屋や土地の所有期間がともに5年を超えている
- 売買契約日の前日時点において、当該住宅に償還期間10年以上の住宅ローン残高がある
- 譲渡価額が住宅ローンの残高を下回っている など
売却で生じた損失を所得全体でカバーできるため、家の買い替えを検討している方にとって重要な制度といえるでしょう。
参照:国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
家の売却の税金と合わせて押さえておくべきポイント
家を売却する際は、利益が出た場合の税金だけでなく、手続き全体を通して押さえておくべきポイントがあります。ここでは、特に重要な3つのポイントを確認しておきましょう。
家の所有年数によって譲渡所得税の税率が異なる
家を売却して利益が出た場合にかかる譲渡所得税は、その家の所有期間によって税率が大きく異なります。
例えば、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以内の場合は「短期譲渡所得」となります。この場合の税率は、所得税30.63%と住民税9%を合わせた39.63%です。
一方、所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」とみなされ、税率は所得税15.315% と住民税5%を合わせた20.315%となり、大幅に軽減されるのが特徴です。
譲渡所得税の税率は所有期間が5年を超えるか否かで大きく変わるため、家の売却を検討する際は、譲渡のタイミングを慎重に判断しましょう。
参照:国税庁「土地や建物を売ったとき」
譲渡所得が発生したら「確定申告」が必要になる
家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、確定申告をしましょう。売却益にかかる譲渡所得税や住民税を納めるための重要な手続きであり、特例で税金を軽減する場合でも申告が必要です。
手続きでは、売買契約書や譲渡所得税を計算した書類などを提出します。申請期限内に提出することで、納税が完了します。
なお、売却で損失が出た場合は、原則として確定申告は不要です。ただし、損失を翌年以降に繰り越して所得と相殺する場合は申請が必要です。
家の売却には税金以外にもさまざまな費用が発生する
家の売却には、譲渡所得税などの税金以外にも、以下のさまざまな諸費用が発生します。
- 不動産会社に支払う仲介手数料
- 住宅ローンの返済手数料
- 抵当権を抹消するための登記費用 など
これらの費用を事前に把握しておけば、思わぬ出費に慌てることなく、安心して売却を進められるでしょう。事前に必要な費用を把握し、資金計画を立てましょう。
まとめ
家の売却では、譲渡所得税や住民税に加え、登録免許税や印紙税など、さまざまな費用が発生します。税金の流れを把握し、自分に合った特例制度を活用して、税負担を軽減しましょう。
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